アメリカ大統領決定リーグ戦

今年、2016年はうるう年。

ということは、オリンピックとアメリカ大統領選挙がある年です。

私がオリンピックマニアなことは本欄ではしばしば言及していますが、じつをいうと「選挙」も大好きです。選挙があるたびにワクワクして候補者を比較検討し、選挙公報をチェックし、投票後は開票速報にクギづけ。もちろん、選挙権を得た二十歳の時から、ただの一度も投票を棄権したことはありません(当然のことですが) 自分に投票権がない、よその選挙も気になります。

なので、地球上に数ある選挙のなかでも、もっとも注目される「アメリカ大統領選挙」にフィーバーするのも、当然でしょう。

すでに、開幕戦である「アイオワ州党員集会」が今週火曜日に開催され、実質的に選挙はスタートしています。民主党はクリントン候補、共和党はクルーズ候補が先勝し、話題をさらった共和党のトランプ候補も頑張ったようです。

毎回、全米のトップを切って行なわれるアイオワ州の党員集会ですが、息子に「なんでアイオワから? 50音順?」と問われました。いや、知らんぞそんなこと。

調べてみると、アイオワ州の州法に「全米で最初に候補者選びをすること」という条文があるんだそうです。その理由はというと、世間の注目を集めるからということらしくて、要するに「目立つから」なんですね。

じゃあ、ほかの州がその座を狙って党員集会や予備選挙の日程を前倒ししてきたら、どうするんでしょうか。州法の規定に従って、アイオワもどんどん前倒しするのかな? そのうちに元日に党員集会とかいう事態になるんでしょうかね。

それはともかく、さらっと「党員集会」とか「予備選挙」とか書きましたが、この仕組みはご存知ですか? 学校では教えてくれないでしょ、こんなマニアックなところまでは。

アメリカ大統領選挙の特徴は、直接投票ではなく、代議員を通した間接選挙であること。つまりアメリカの有権者は、直接「クリントン」とか「クルーズ」とか「トランプ」とか投票用紙に書くことはなく、「私(たち)は、この候補に投票します」と宣言した代議員(団)に投票するんですね。

で、各州ごとに、その州を代表して投票する代議員を選ぶのが、11月に投票される「大統領選挙」なのです。そして、アメリカの二大政党である民主党と共和党のそれぞれが、各州ごとに立候補させる代議員候補を選出するのが、これから半年にわたって繰り広げられる、予備選挙または党員集会というわけです。

予備選挙は、いわゆる選挙の投票が行なわれるもので、党員集会というのは、文字通り党員が集まって話し合いで代議員候補を決めるもの(決まるもんなのかいな)。この選出形式は各州、各党ごとに違いますが、それがこれから毎週のように全米各地で行なわれるのです。

そのため、どういう選挙戦になるかというと、候補者は予備選挙や党員集会が行なわれる州にいちいち赴き、そこで選挙活動を行なうのです。

代議員を選ぶといっても、代議員候補は先に誰に投票するか宣言しているので、その背後にはすでに大統領候補が透けて見えている。つまり、実質的には大統領候補に投票するのと同じこと。

ということで、大統領候補その人が、各州現地で選挙活動(演説や握手やその他)を行なわねばならないのです。だから選挙そのものの風景は、そう特殊なものではありません(現地で見たことないけど)

ただ、日本などと大きく違うのは、その移動距離と経費の巨大さ。これが二大政党以外の候補をほぼ排除する仕組みにつながっています。政党のバックアップか、よほどの自己資金力がないと、この負担には耐えきれません。

これからニュースなどでどんどん流される映像になると思いますが、候補者本人だけでなく、選挙参謀をはじめとするスタッフや、家族、場合によっては応援する人々までが、全米各地を転々と移動し選挙活動をくりひろげるのです。

なにしろアメリカは広いですからね。チャーター機や、バスのコンボイ、貸し切り列車などを使って、選挙期間中の移動距離は数万キロにもおよぶとか。実際、次週予備選挙が開催されるニューハンプシャー州まで、アイオワ州からは約1,800キロの大移動。それだけでもすでに日本列島縦断くらいの距離。ごくろうさんです。もちろんその先には、さらに過酷なロードが待っているわけです。

というのを考えていて、ふと、私自身がなぜ大統領選挙にフィーバーするのかに思い至りました。

プロレスのリーグ戦に似ているんだ!

その元祖は、力道山の日本プロレスが1959年から始めた「ワールド大リーグ戦」 トップレスラーを集めて、総当たりのリーグ戦形式で優勝を争う、あれですね。

現在でも、全日本プロレスの「チャンピオンカーニバル」 新日本プロレスの「G1クライマックス」 プロレスリング・ノア「グローバル・リーグ戦」 ゼロワン「火祭り」 大日本プロレス「一騎当千」などなど、各団体で盛んにおこなわれています。マスコミも注目し、観客も集めやすい、プロレス界のキラーコンテンツ。

ふと思ったんですが、この形式、けっこう日本独特かも。

リーグ戦参加選手を含めて、全選手スタッフがまとまって、日本各地を巡業しながらリーグ戦を消化して勝ち点を競い、最後に成績上位者が大会場のビッグマッチで優勝決定戦を行なう形式。プロレスの風土が違うアメリカやメキシコでは行なわれていないと思います。

かつては新日本の「G1」は国技館での集中開催でしたが、その後は全国転戦型に変化しました。ことほどさように、この巡業式リーグ戦は人気があるのです。

現在はだいぶ小規模化しましたが、全日本プロレスの春の本場所「チャンピオンカーニバル」は、その過酷な日程と試合の激しさから「世界一過酷なリーグ戦」の異名をとったものです。ファンは、毎日のように報道される結果にワクワクドキドキしながら、自分で星取り表を作って遊んだもんです。そのタッグマッチ版である「世界最強タッグ決定リーグ戦」もプロレス界のロングセラーヒット作ですね。

ね、全米各地で50戦もの闘いを繰り広げ、代議員数という点数を競い、最後に、夏に行なわれる党大会で正式な大統領候補を選出する「決勝戦」が開催される。

これまさに「世界一過酷な選挙戦」でしょう。これを楽しまない手はない!

というわけで、今年の私は、秋の本選挙まで大統領選挙ウォッチングを楽しめるわけです。ああ、楽しい。

日本でも、選挙の投票率が低いと嘆いてばかりいないで、選挙のエンタテインメント化、ショウアップを試みてはいかがでしょうか。プロレス界をお手本にして(馳・文科相にでもレクチャーしてもらってください)

もしも日本で首相公選が実現するなら、私は、断然この「全国転戦型巡業選挙形式」を推薦します(笑)

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