荒野の三十五人(中編)

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前回の続きです。

1966年の「続・荒野の七人」の成功(したんだろうね)を受けて、シリーズ第3作が製作されます。

1969年の「新・荒野の七人/馬上の決闘」(原題はGUNS OF THE MAGNIFICENT SEVEN、ちなみに「続~」はRETURN OF THE SEVEN)。うわ、なんかすでにB級色が濃いタイトルですねえ。

本作からクリス役が交代しました。映画のスケールも小さくなった気がするので、たぶん予算が減ったんでしょう。でもこのころのユル・ブリンナーはあまり作品を選んでいない感があるので、何かほかの事情があったのかも知れません。

2代目クリスをつとめたのは、ジョージ・ケネディ。いや、私は大好きな俳優だし、この時点でもうアカデミー助演男優賞(「暴力脱獄」)を受賞しているのですからけっして小物ではないです。でもリーダー感もヒーロー感も薄いよねえ。誰が彼を起用しようと思いついたんでしょうか。やっちまった感満載です。

なので、他のメンバーもちょっとどころでない格落ちです。ご紹介しましょう。ちなみに今回からヴィンは姿を見せていません。

元保安官の馬泥棒キノ(モンテ・マーカム)、若き農民マックス(レニ・サントニ)、初老のガンマンのリーバイ(ジェームズ・ホイットモア)、黒人ガンマンのキャシー(バーニー・ケイシー)、元南軍で片腕のスレイター(ジョー・ドン・ベイカー)、全身黒ずくめでクールなPJ(スコット・トーマス

悪く言うのは申しわけないが、あまりにも華がないメンバーです。名わき役のホイットモア、のちに「突破口!」「ウォーキング・トール」などで台頭し、007シリーズにも出たベイカーがいるとはいえ、どう見ても前回よりもさらに格落ち。

メキシコ革命と「七人」をからめたアイデアは悪くないのに、このメンバーとポール・ウェンドコス監督では力量不足だったんでしょうか。出来ばえは残念の一言。エルマー・バーンステインの名テーマ曲が浮いて聞こえる体たらくでした。今回は、明らかにマカロニウェスタンの影響が出ているのも間違いないところです。

という結果を受けても、なお続篇がつくられるのがすごいところ。

1972年「荒野の七人/真昼の決闘」という名作2本立てみたいなタイトルで公開されました。原題はTHE MAGNIFICENT SEVEN RIDE!

リーダーのクリスを演じるのが、マカロニウェスタンの大物リー・バン・クリーフになった時点で、もうまったく違うぞ感が漂いますが、その期待を裏切りません。

なんと、前作まではそれでも踏襲され、このシリーズのフォーマットだったはずの「七人」のメンバー集めをバッサリ取りやめてしまったのです。クリーフ扮するクリスは、刑務所へ赴いて、自分がムショに放り込んだ連中からメンバーを選んでしまう。なんたる手抜き!

そうはいっても、メンバーを紹介はしておきましょう。

元新聞記者でクリスの伝記執筆をしたがるノア(マイケル・カラン)、凄腕ガンマンのマーク(ルーク・アスキュー)、山賊のペペ(ペドロ・アルメンダリスJr)、気のいい大男ウォルト(ウィリアム・ラッキン)、元南軍大尉のヘイズ(ジェームズ・シッキン)、ダイナマイト爆破名人スコット(エド・ローター

意外にも、「新・荒野の七人」よりはクッキリしたキャラクターが並んでますね。マカロニ臭がより強まってますが。クセ者わき役としてちっとは知られているアスキュー、アルメンダリス、ローターあたりもいて、そうとうに濃い顔合わせですからね。ただその顔ぶれがうまく機能したかというと、ちょっとねえ。

という具合で、ウェスタンの退潮とも相まって、「荒野の七人」シリーズは終焉を迎えます。全4作。え? 本稿のタイトルと数字が合わないって? その秘密はまたまた次回につづく。

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