500円映画劇場「グリード」

【無料で全文お読みいただけます】

ホームセンターの隅によくある、DVDの安売りワゴン。そこは、ここでしか見つからないような「迷画」の宝庫だ。ワンコインで手に入るが誰も買わない、そんな映画を見てみたんだが……

「下水道のワニ」って知ってるかい? ペットのワニを下水道に捨てたら巨大に成長しちまったってやつ。都市伝説として広く流布して、もはや手垢の付きまくったようなこのネタにあえて挑戦したのが、この「グリード」だ。下水道のワニって、そんなに魅力的なネタなんでしょうかねえ。

お話は、およそヒネリのないもの。動物密輸業者が逃がしちまった大ワニが河へ脱出。やがて下水道でかじりかけの鹿の死体が見つかる。ただ一人ワニの存在に気づいた新人女性検視官は、ワニハンターと新聞記者の協力を得てワニを追うが、いっぽう密輸業者もワニを取り戻すべく暗躍する。三つ巴の追跡劇が続くうち、ついにワニに襲われた犠牲者が……

前回に続いてまたしても、オレの書いたあらすじのほうが面白くなってしまった気がするが、こうしたストーリーが緊迫感なくダラダラと続くのだ。

繰り返し書くが、およそ新味のないお話。それをどう料理するかが作り手の腕の見せ所だろう。そこで、この映画のスタッフたちは何を考えたか?

なんとこの動物パニック映画そのもののストーリーを、コメディ仕立てにしちまったのだ。ワニハンターを身をもちくずした子持ちのバツイチ男に、女性検視官をひっつめ髪に眼鏡のリケジョに、新聞記者をホモでデブのお調子モノにし、密輸業者もお笑い三人組みたいなちょっとドジなギャングに設定。ワニ追跡の合間に彼らがしょうもないギャグを次々と発射する。もちろんリケジョ検視官が眼鏡を外すとじつは美人だなんていうベタな展開も盛り込まれてて、見てる方が恥ずかしいくらいだ。

ま、それはそれでいいんですがね、問題は、そうまでしながらもメインのストーリーをそのまま動物パニックものにしてること。ワニに喰われた死体とか、がっつり映るし。おかげで、動物パニックとしてもコメディとしても、まことに中途半端なものに仕上がっているのだ。見ている側としては、この映画を見ながら、迫力ゼロのサスペンスに手に汗握るべきなのか、寒いギャグに笑い転げるべきなのか、なんとも宙ぶらりんな気持ちにさせられる。

しかも本来主役を張るはずだったワニの特撮が、不必要なまでによく出来ていることが、この事態に拍車をかけている。本物のワニ(結構デカい)を使っているようなのだが、多くのワニ映画を見てきた目にも、けっこうリアルで迫力がある。人間をガリガリ食っちまうような見せ場が少ないのは惜しいが、その熱演ぶりは特筆もの。なのに、出来上がった映画が見事にその迫力を裏切っているのが、まことに残念だ。

こうしてこの半端映画は、日本では劇場公開もされずにDVDスルーで発売され、安売りコーナーに没することとなったのだ。なにごとも、中途半端はいけないんだね。

そういえば、この「グリード」という日本語タイトルも、どうなんだ。じつはこの作品ドイツ映画のTVムービーで、もともとのタイトルは「ZWEI ZUM FRESSEN GERN」、アメリカでのタイトルも「CROCODILE ALERT」なのだが、日本版ジャケットには「GREED」といオリジナル(?)な英語タイトルまで入ってる。迫力満点で狂暴そうなワニのイラストと、「襲いくる破滅」っていうコピーも合わせて、まったく映画の中身を伝えてないと思うぞ。

ま、それでも買う奴がいるんだから、いいのか(オレだよ)

【本文はこれで全部です。もしもお気に召しましたらご寄進下さい(笑)】

ここから先は

0字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?