旅行でとらぶる(1)現地係員がいません
私が生まれて初めて海外旅行に出たのは、いまから30年近く前のこと。いわゆる新婚旅行ってやつでした。
今はあんまりそういうふうにはしないようですが、当時は結婚式の翌日からやや贅沢めの海外旅行などに行くのがふつうで、われわれも結婚式を挙げた翌朝、成田空港からアメリカへと旅立ちました。フロリダのディズニーワールド→ナイアガラの滝→ニューヨークという旅程です。
そのころは海外旅行といえばたいがいはツアー旅行。旅行会社の企画販売によるパッケージ旅行が主流。われわれ夫婦も新婚旅行用のパッケージツアーをチョイスしていました。
集合場所の成田空港で初めて知ったのですが、ツアー参加人数は4人。われわれ夫婦と札幌から来た新婚夫婦だけでした。
成田空港では旅行会社の係員がいろいろ世話を焼いてくれます。荷物のチェックイン、搭乗手続きなどなど。でも、日本の係員はここまで。出国手続きから先はわれわれ4人だけで出発です。でもご安心を。アメリカで入国して税関から出れば、そこで現地係員がお待ちしております、という仕組み。
最初の旅行先は、アメリカのフロリダ州オーランド。当時は直行便はなく、成田からサンフランシスコ、乗り継いでシカゴ、そこからオーランドへというルートです。
最初に降り立ったサンフランシスコ空港で、無事に入国審査を済ませ、荷物を受け取って外に出ると、そこに「現地係員」さんがいました。在留邦人の女性でした。彼女は海外旅行でいちばん面倒くさい手続きである、乗り継ぎを手伝ってくれました。
次いでシカゴのオヘア空港へ。ここでも現地係員が待っていて、フロリダへの便への乗り継ぎをヘルプしてくれました。これは助かります。乗り継ぎはたいてい待ち時間が長いのですが、彼女たちはその間の時間つぶしまで案内してくれました。
成田を発って十数時間以上、ようやくフロリダのオーランド空港へ到着。到着時刻は夜遅く。飛行時間と待ち時間で、すでにへとへとですが、もうひと踏ん張りでホテルに入って休むことができる……はずでした。
ところが、オーランド空港でゲートから出たところで、たいへんなショックが待っていました。
現地係員がいないのです。
最初は困惑、次いでパニックが襲ってきました。
なにしろここは初めての海外、アメリカです。どっちをむいても外国。さて、どうしよう?
完全に想定外の事態です。4人とも、どうしていいのかわかりません。どこかに(例えば旅行会社に)連絡を取ろうにも、公衆電話のかけ方すらよくわかりません(まだ携帯電話などなかった時代です)。完全アウェイ状態。
そこでどうしたか? じつはよく覚えてないんですが、なんか空港にあった日本の航空会社のカウンターに泣きついたような気がします。といっても彼らに何かができるわけではなく、それでも現地で宿泊予定だったホテルに連絡を取ることができました。
幸いにも、ホテルにはちゃんと予約が入っているとのこと。そこでとにかくホテルに行くしかあるまいということになりました。
でもどうやって? ホテルがどこにあるかもわかりません。
ところがそこはさすがに観光都市オーランド。荷物を抱えてよろよろとタクシー乗り場へたどりつき、ホテルの名を書いた書類を見せると、あれよあれよという間に車が手配され、夜のハイウェイを一路ホテルへ。
そこからはスムーズでした。すでに支払い済みであったらしく、ホテルの受付ではすぐにチェックインでき、おまけにフロントにはディズニーワールドのチケットや、食事用のクーポンまでがちゃんと届いていたのです。
けっきょくバタバタしたのはそこまで。翌朝からはディズニーワールドで遊び倒すことができました。その間に、なんとか旅行会社に連絡をとり、事態を説明もしました。
けっきょく「現地係員」が現われたのは、フロリダを離れて次の訪問地へ発つその日のこと。なんでも旅行会社の連絡ミスだったとか納得のいかない説明があり、ホテルから空港までの車を手配してはくれましたが、正直言ってまったく役に立っていない「現地係員のご案内」でありました。
散々なスタートとなり、じつのところこの後もナイアガラでわれわれを乗せるはずだったバスが故障したとかでなかなか来ず、あげくに4人だけで代替の巨大な観光バスに乗せられるなど小さなトラブルがありましたが、なんとか無事に新婚旅行を終えることができました。
海外旅行なんてもうコリゴリ、となりそうなものですが、これで逆に度胸がついたのか、その後もわれわれ夫婦はせっせと海外旅行に出かけることになります。そしてその先々で、こうしたトラブルはちょくちょく発生しました。
そうした、まあ笑えるトラブルを、これから少しずつ紹介していこうと思います。なんの参考にもならないでしょうが、おつきあいください(笑)
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