ジャッキー・チェンと勝負する(2)

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第2ラウンドは「ドランクモンキー 酔拳」。ジャッキー・チェンの実質的な日本デビュー作だ。日本公開は1979年だから、もう35年も前。いまやずいぶん懐かしい映画になったもんだ。

ジャッキー演じる主人公がじつは、ずっとのちに「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ」で日本にも知られるようになる黄飛鴻(ウォン・フェイホン)だったとか、日本で独自につけた主題歌が傑作だとか、いろいろウンチクもあるけれど、そういうのは別の機会に……

1979年の日本公開時は、洋画館ではなく、東映の邦画番線で上映された。

当時の番線は二本立てがほとんどで、洋画(香港映画だって外国映画だから洋画だった)が番組されることはけっこう珍しかった。ちなみに同時上映は東映の看板シリーズだった「トラック野郎」シリーズのどれかだった。

そのへんの記憶がないのは、私がこの作品を試写会で見たせいだろう。先行試写会で見たので、劇場にはいかなかったのだ。

その試写会は、よみうりホールだったと思う。キネ旬だかぴあだかの抽選で当たって、大学プロレス研の友人と二人で出かけたのだろう。そのころはこうした試写会プレゼントが鑑賞本数を増やすのに必須だったのだ(みんな貧乏だったからね)。

コミカルなカラテ映画(まだカンフー映画って言い方はあんまりなかったよな)は初めてだったと思う。観客の受けもよく、けっこう場内は沸いていた気がする。オレたちもけっこう笑った。

で、ラスト。

いま見直してもそう思ったが、この映画、最後はけっこうシリアスな展開になる。

ウォン・フェイフォンと殺し屋の手に汗握る死闘は、クンフー映画史上に残る名勝負の一つ。試写会場内も息をつめて見守ってました。

さて、映画を見た人は覚えていると思うけど、死闘の最後、ジャッキーのフィニッシュは、倒れた相手の上に自分も倒れこみながらの肘打ちだ。

形だけ見ると、まさにプロレスのエルボードロップ。

死闘に精根尽き果てたジャッキーが息も絶え絶えに放つ最後の一撃なわけだが、プロレス研のオレたちの目には、当時の人気レスラーだったアブドラ・ザ・ブッチャーの「毒針殺法」にしか見えない。二人して大爆笑……そこ笑ってるの、オレたちだけ(笑)

ジャッキーの死闘に息を呑んで静まり返っていた(それだけ迫力ある死闘だった)観客席に響きわたるバカモノ二人の笑い声。いやいやけっこう恥ずかしかった(笑)

以来、この件を教訓にして、試写会では静寂を守る……なんてことにはならなかったが。

ジャッキーとともに年を取ってオッサンになったオレたちの、今となってはいい思い出だ。

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