ジャッキー・チェンと勝負する(5)
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第5弾は、「酔拳2」。
急にずいぶん新しい映画になったな、と思ったが、1994年の映画だからもう20年も前なのか。「ドランクモンキー 酔拳」の続編なのだが、前作との間は16年。公開当時はずいぶんひさしぶりの続編だと思ったもんだが、いまやその間隔よりも時間がたっているんだな。
さて、ここまでのジャッキー映画は、なんだかんだ言っても面白い映画で、文句を言いたい部分はあんまりなかったんだが、これはちょっとね。公開当時もずいぶん期待して見に行って、微妙な気分になったんもんだった。
映画が微妙な出来栄えになったのは、やはりジャッキー自身に迷いがあったからだろう。この映画を作るにあたって、ジャッキーが目指す方向性は三つあったと思う。
(1)懐かしの自身の出世作「ドランクモンキー」の続編を作る。
(2)「プロジェクトA」「ポリス・ストーリー」といったシリーズ作品などを積み重ねて築き上げたジャッキーアクションの新作を作る。
(3)この時期に大ブームを巻き起こしていたツイ・ハーク監督、ジェット・リー主演の黄飛鴻もの「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ」シリーズに対抗する決定版を作る。
そもそもジャッキーは、1982年の「ドラゴン・ロード」を最後にカンフー映画とは決別し、以後は現代アクションに専念していた。そのジャッキーが、あえてこの時期にカンフー映画に舞い戻ったのは、やはり(3)のせいなのは間違いないだろう。「ドランクモンキー」の主人公が、じつは「ワンチャイ」シリーズのヒーロー黄飛鴻と同一人物であることはすっかり忘れられていた感もある。またこの翌年、ジャッキーは「レッド・ブロンクス」を引っ提げてのアメリカ映画殴り込みを控えていた。ここらで今一度、往年のカンフー映画を作って景気づけを、と考えたのかもしれない。
結果、「酔拳2」は、なんともどっちつかずの映画になってしまった。
開巻の鉄道駅の戦い(対ラウ・カーリョン)の不必要なまでの大セットは、明らかに「ワンチャイ」への対抗心だろう。だが、そこに投入されたのは、「ドランクモンキー」のころの悪ガキキャラそのまんまのジャッキー。いちおう歴史ドラマの体裁を整えていた「ワンチャイ」の黄飛鴻とは明らかに違い、コミカルっぽさを強調しているが、おかげで違和感バリバリだ。
いっぽう、撮影スケールこそ大きいが、そこにはジャッキーアクションの「破壊」のカタルシスはない。この時点ではもう、ジャッキーアクションは、肉体を痛めつけるカンフーアクションとは別のものへと進化していたのだ。にもかかわらず、ジャッキーアクションの器でカンフーを見せたのは、明らかな計算違いだろう。
そうは言っても、もちろんこの映画、一級品であることは間違いない。ひょっとしたら「ドランクモンキー」と「黄飛鴻」を切り捨てて、純粋にカンフー映画を作っていたら、途方もないヌーベル・カンフーアクションができていたかもしれない、そんな可能性は感じさせた。
これ以降、ジャッキーはカンフーアクションを作っていない。(「カンフーパンダ」は別・笑)
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