ジャッキー・チェンと勝負する(8)

第8弾は「少林寺木人拳」。

しかし、全74巻の予定だから、これでやっと10分の1を消化しただけ。前途遼遠ですな。

本作は1976年の作品。今回のシリーズでは、現時点で最古の作品になり、当然、ジャッキーの出世作「スネーキーモンキー」よりも前の作品だ。

ジャッキーの人気が爆発した「スネーキーモンキー」以降の諸作は、多かれ少なかれ、同作のスタイルを踏襲している。それは、商売として映画を作る以上当然だし、また自らのスタイルを確立したジャッキー本人の意向もそこに反映されていると考えるべきだろう。

そのスタイルとは、激しい動きにコミカルなアクションを混交し、ストーリーそのものもコメディ色を強めるというものだ。

ところが、「それ以前」にあたるこの「少林寺木人拳」では、そうしたコミカル要素はほとんど見られない。

子どものころに父を殺されて孤児となった、ジャッキー演じる主人公が、修業を経て父の復讐を遂げるというストーリーは、「それ以前」のカンフーアクション、いや当時の呼び方でいえば「カラテ映画」のそれ、そのままだ。これは、当時のジャッキーのボスであるロー・ウェイ(羅維)のスタイルだろう。

日本ではブルース・リーとジャッキー・チェンが代表的とされる「カラテ映画」だが、その二人はじつは「カラテ映画」ではけっこう異端に属する。まあ、今回はそこには深入りしないが。

「少林寺木人拳」では、主人公のジャッキーが口をきけないという設定も相まって、全体のトーンはおそろしく暗い。

ところが、日本での公開は、香港より大きく遅れて1981年。われわれがこの作品を目にしたのは、「ドランクモンキー」どころか「バトルクリーク・ブロー」(1980)よりも後だったんだから、当然ながらものすごい違和感を感じたものだ。こんなのジャッキーじゃない!的な。

そんなわけで、当時、私的には決して評価の高くなかった「少林寺木人拳」だが、今回30年以上ぶりに再見しての評価は、「やっぱりイマイチ」。

まあ公開当時よりは楽しんだ(カンフーアクションそのものはけっこう見せる)が、当時よりも強烈に感じたのは……

「少林寺木人拳」てタイトルなのに、「木人拳」が話の中心じゃない!

実際に「木人」が出てくるのはオープニングと中盤だけ。復讐譚のストーリーは、ジャッキーが「木人拳」の試練を突破した後から始まり、後半は「木人」とはほとんど無関係なのだ。

これでは、看板に偽りありだよ。香港での原題も「少林木人巷」だから、日本の配給会社の陰謀ではないんだが、見終わってからも何とも釈然としないのはやむを得まい(笑)

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