アンクルから帰ってきた男

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いよいよ今年の秋に、あのナポレオン・ソロとイリヤ・クリヤキンのコンビが復活することになった。

といっても、大部分の人には「へえ」程度のことでしょうが。いや、下手すると「へえ」どころか「へ?」かな。

007が巻き起こしたスパイブームに乗って、1964年から放送されたテレビ・シリーズ「0011ナポレオン・ソロ」を知っているのは、私も含めて、もうオジサンオバサン世代だろうね。しかしスパイブームのさなか、007に次いで、いや時にはそれ以上の人気があったのが、このスパイコンビなのだ。

英国情報部所属の公務員である007ジェイムズ・ボンドに対し、国際組織(現代風にいえばNGOなのかな)である「アンクル(U.N.C.L.E.)」所属の二人が敵対する犯罪組織「スラッシュ」と闘うというコンセプトの、シンプルなスパイもの。なにしろテレビベースなので、ボンド氏ほどの大仕掛けなものはなかったがちょっとした秘密兵器の数々と、粋でオシャレな会話と雰囲気で大いに人気があった。とくにイリヤを演じたデビッド・マッカラムはアイドル的な人気を博し、本来主役であるはずのソロ(ロバート・ヴォーン)を喰ってしまったほどだ。

といっても、さすがに私もそこまで古くない。

私がこのテのものにハマった1970年代にはすでに放送は終了しており(アメリカでは1968年、日本では1970年まで)、ハヤカワのポケミスから出ていたノヴェライズ小説もほとんど品切れだった(古本屋を回ってほぼ10年がかりで全作揃えたものだ)

なので、私が熱心に見たのは、日本では劇場公開されたスペシャル版のテレビ放送だった。今調べてみたら、8作あったそうだが、全部見たかどうかは自分でも定かではない。ちなみに列挙すると以下の通り。(タイトルの頭についていた「0011ナポレオン・ソロ」は省略しました)

罠を張れ」(1964) 「消された顔」(1965) 「地獄へ道づれ」(1965) 「消えた相棒」(1966) 「ナポレオン・ソロ対シカゴ・ギャング」(1966) 「ミニコプター作戦」(1967) 「スラッシュの要塞」(1967) 「地球を盗む男」(1968)

うん、かっこいいタイトルが揃ってるな、60年代的に。

まあシリーズの再放送もちょくちょくあったので、あの吹き替え版(矢島正明と野沢那智)の名調子もよく覚えている。「ナポさあん」とかね。

時は流れて1983年になって、このコンビが突然復活したことがある。アメリカで作られたTVムービーで、日本でもビデオ発売された。「0011ナポレオン・ソロ2/帰ってきたナポレオン・ソロ」がそれで、引退していたソロのもとに15年ぶりでチャンネルD指令が来るシーンは、けっこう感動的だった。いやホントに。オリジナルの二人が揃った点は評価高いが、まあ全体としては大したものではなかったけどね。

ちなみにこの作品には、あのジェイムズ・ボンドもチラリと登場し、ソロとイリヤの手助けをする。演じるのはもちろん、こういう時に重宝される2代目ボンドのジョージ・レイゼンビーだった。そう、じつはこの「0011ナポレオン・ソロ」の原案を考えたのは、007の原作者でもあるイアン・フレミングだったのだ。

その後も何度か復活の噂があった。クエンティン・タランティーノが作るという話もあったはずだがお流れとなり、もう無理だよなと思っていたら、突然このタイミングで実現したわけだ。

ネットに公開された予告編を見る限りでは、舞台は冷戦真っ只中の60年代前半あたりで、ソロがアメリカの、イリヤがソ連のスパイという設定らしい。日本でのタイトルも、「コードネームU.N.C.L.E.」(原題はThe Man from U.N.C.L.E. これは元々のTVシリーズのタイトルと同じ) うーん、なんか違う。

まあいいや、映画は別物として楽しませてもらいましょう。でも、あのテーマ曲はぜひ使ってもらいたいね。

じゃあ、10月に会おうぜ

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