サントラ盤が好き!

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まだ映画をビデオやDVDでコレクションすることができなかった時代、映画を見て、その映画を好きになった時に、記念品的に集めるアイテムが3種類ありました。べつに「三種の神器」と呼んだりはしてませんでしたが。

ほとんど誰もが集めていたのが、劇場用のパンフレットや宣伝用のチラシ。なかには、映画会社から映画館に提供されるスチル写真やポスターを集める人もいました。これ、映画コレクション道の基本。

次いで、その映画の原作本。原作がないオリジナルの映画の場合でも、脚本から小説化したノヴェライゼーションもけっこう出てましたね。これを読んで、映画を再体験するわけです。ビデオなどがなかった時代、次にいつ再見できるかわからなかったですからね。

そしてもうひとつが、その映画の音楽や主題歌を収録したレコード(もう死語かな?)。これには、スコア版とかイメージ曲とか、いろいろなバージョンがありましたが、なかでも「オリジナル・サウンドトラック盤」略して「サントラ盤」の蒐集が王道でした。

この3種のうち、パンフレットや原作本は今でもほとんどそのままですが、すっかり様変わりしてしまったのが、サントラ盤ですね。

LPレコードに一本の映画の音楽をほぼ全部収めたサントラ盤は、コレクター魂を著しく刺激するアイテムでした。私はけっこう熱狂的に蒐集してたのですが、近年はあまり興味がなくなりました。

LPがCDになったせいです。

いや、収録される曲の数はCDのほうが多いし、あつかいも塩ビのレコードよりはるかに楽、収蔵に場所をとらないなど、音楽蒐集家にはけっして悪条件ではないCDですが、ことサントラ盤蒐集には大きな欠点があるのです。

サイズが小さいこと。

もう実物を見たことのない人も多いのでしょうが、かつてのLPレコードは直径30センチ。当然それを収納するジャケットも約30センチ四方ありました。

対して、CDは直径12センチ。ケースも12.4×14.2センチが一般的です。だからコンパクト・ディスクというんですが、当然かなり小さい。もちろん持ち歩きや収蔵にはこの方が良いに決まってますが、ことサントラ盤に関しては、あまり都合よくないんです。

それは、ジャケットデザイン。

映画のサントラ盤ですから、当然ながら使える視覚的要素はたっぷりあるわけで、おまけに30センチ×30センチの正方形。制約もほとんどなしとあって、デザイナーたちには腕の揮いがいのあるメディアだったんでしょう。けっこうさまざまな意匠を凝らしたサントラ盤が多かったのです。

1970年代後半に人気があった特集雑誌「映画宝庫」の1978年新年号が「サントラ・レコードの本」という特集でした。これで蒐集熱にますます拍車がかかりました。そこでカラーページにずらりと紹介されていた、サントラ盤の華麗なるジャケットの数々は、あたかも美術展のごとき煌びやかさで、魅了されたました。

スチル写真を組み合わせたり、広告用のイラストやロゴを流用したり、まったくオリジナルのデザインをわざわざ用意したりと、なかなか手の込んだものが多かったですね。もちろん、そうしたなかには映画ポスターをそのまま流用したものもありましたが、でもそのポスターが国内使用のものと違う海外版のものだったりもするんです。

大袈裟にいえば、これでグラフィックデザインというものが何なのかを学んだような気もします。

まだコレクション枚数が少ないころには、床にずらっと並べて眺めてはニコニコしていたもんです。

サイズが小さくなったCDでも、もちろんジャケットデザインはされていますが、いかんせん大きさが違います。迫力不足。おまけに透明なプラスティックをはさんでの鑑賞となるので、どうしても色褪せて見えてしまうのですね。なので床に並べるようなことは、すっかりしなくなりました。

ところで、サントラ盤蒐集をしていた当時は、今みたいなネット販売もなかったので、それこそ足を棒にして探し回るしかありませんでした。都内にはいくつか専門店めいたところがあって、国内盤はもとより、それよりも圧倒的に数があった輸入盤までがあつかわれていて、小遣いやバイトの給料を握りしめてよく通ったものです。おかげで、欲しかったサントラ盤にめぐりあった時には、うれしさ倍増。

なかでも渋谷にあった「すみや」では、ずいぶん売り上げに貢献しました。ここは海外のプライベートレーベルの珍品まであつかっており、また中古品の大セールなどもやるので、せっせと通ったもんです。「電撃フリントアタック!作戦」「動く標的」「大泥棒」「紳士泥棒/大ゴールデン作戦」などは珍品だったうえ、ジャケットデザインも美しく、今でも宝物です。

この「すみや」は、本店が静岡にあり、大学受験時に静岡大学を受けに行った私は、試験もそこそこに「すみや本店」に参上しましたっけ。このときに買ったサントラ盤は「シンシナティ・キッド」でした。

その後、サントラ盤の主流が、それまでの劇中音楽を収録したものから、既成のヒット曲も含めた挿入曲を収録したものに移り(そのほうが売れたんでしょうね)、なんかサントラ盤というよりも、いまでいうコンピレーション・アルバムみたいになってきて、そこへCD化の波が来たせいで、その後は蒐集熱が冷めました。

そんなわけで今では聞くこともない(そもそもレコードをかけるプレイヤーがない)LPのサントラ盤がほぼ200枚以上、わが家の納戸に眠っているわけなんですが、あれ、いったいどうしたもんかなぁ?

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