古史古伝=奇想天外

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まえに、日本にピラミッドがあるって話を書いたが、アレとよくセットで語られるのが、いわゆる「古史古伝」。日本の歴史を最初に書いた「古事記」と「日本書紀」よりも前に書かれ、あそこにある歴史よりも前に存在したといわれる「超古代文明」を記した文書のことだ。

さまざまな文書が日本各地に伝えられている。「カタカムナ文書」とか「ホツマツタエ」とか「九鬼文書」とか「宮下文書」とか「東日流外三郡誌」とか、名前を耳にしたこともあるかもしれない。

漢字伝来以前に日本に存在したという「神代文字」という暗号みたいな文字で書かれ、いずれもその唯一の写本が私有物で学問的な研究がなされていないとか、まあ有体に言って怪しさ満載なわけだが、なによりも怪しげなのはその内容だ。

要するに、考古学的には旧石器文明しかなかったはずの時代、「記紀」で書かれている神武天皇以前の時代に、現代文明をもしのぐスーパー文明が存在したと伝えているのだ。

その文明は衰退し、その後に日本を統治したヤマト王朝(邪馬台国)が、その存在を抹殺したというのが、いろいろ差異はあるものの、各文書が伝えるだいたいの要旨。

つまり「日本のピラミッド」をはじめとする(ホントに実在するのかしないのかよくわからない)遺跡の数々(キリストの墓とかモーゼの墓とか富士山麓の地下都市とかなどの金属ヒヒイロカネとか、じつに色々ある)がある以上、それを作った(歴史学の常識を超えたスーパーな)文明があるはずだし、そんな文明があった以上はそれを記録した文書も(人知れず秘密裏に)あったに違いないという、ちょっと逆算過ぎる論理が先にあり、それに見合った文書が(どこかから偶然に)発見されるというのが基本パターンだ。

私がけっこう好きだったのはこうした古史古伝の代表格である「竹内文書」だ。日本のピラミッドがブームとなった時期には、これとセットでよく語られ、あつかった本もずいぶん出版された。買ったよ、もちろん。

現在の天皇系統の以前に数万年にわたる王朝が存在し、日本は世界文明の中心であり、キリストやモーゼや釈迦も日本で修行し、当時の天皇は空飛ぶ船で世界中を巡幸したとか、まあどう考えてもホラだよなというようなお話が満載。

そんなシロモノでも信じることはできるようで、昭和初期に出現した竹内巨麿により秘伝の文書が公開されるやけっこうな「信者」を獲得し、戦時中には官憲によって取り締まられた(ちなみに今でも「竹内文書」を中心とした宗教法人「皇祖皇太神宮天津教」は存続している)

戦時中に警察に押収されたオリジナルの文書や数々の遺物が空襲によって焼失したとか、なかなか人の興味を引く仕組みになっている。

「竹内文書」の中で私の好きだった話に、かつて世界各地の反乱分子を討伐したのが「桃太郎王子」で、その遠征が昔話のもとになったというエピソード。思わず信じそうになったよ。

こうした古史古伝、内容の奇想天外さはともかく、そのほとんどは「発見」の経緯や、神代文字の構造などに疑問点が多く、少なくとも現存するらしい写本のほとんどが言い伝えよりもずっと新しい年代に成立していることから、すべてが「偽史」であるだろうと判明している。

まあたしかに、日本の古代史には巨大な空白があり、邪馬台国の位置はおろか、その実在すら証明されておらず、重要な遺跡であるはずの巨大古墳が充分調査されていないとか(宮内庁のせいだ)、数多くの「ツッコミどころ」があるので、こうした「古史古伝」が誕生する余地はあるし、絶対嘘だという証明もまた困難ではある

ロマンというには少々アレだが、フィクションとして楽しむ分には充分面白いので、私は好きだな。ただ、どの文書もダラダラと長いばかりなんで、なかなか読む気にならんのだよ。誰か、リーダビリティの高い古史古伝、作ってくれないかね。

 超常現象なんか信じない 目次

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