アメリカ大統領決定リーグ戦・12

アメリカ大統領選挙は、日本時間11月9日に、ドナルド・トランプの勝利で幕を閉じた……そう思ってません?

残念でした。

アメリカ大統領選挙は、じつはまだ終わっていないのです。

だから、トランプ勝利にネガティブな人も、クリントン敗北に絶望してる人も、まだガッカリするのは早いぞ。

はい、この前行なわれたのは「大統領を選ぶ選挙」ではありません。行なわれたのは「大統領を選ぶ人を選ぶ選挙」なんですね。これが、間接選挙というやつ。

昨日さかんにあちこちで目や耳にした「選挙人」というやつですね。昨日の選挙で選ばれたのは。全米で538人の選挙人を誰にするかの選挙だったのです。

そして、これからこの選挙人たちが、各州であらためて投票を行ない、その結果で大統領が決まる。つまり「大統領を選ぶ選挙」の本当の本番は、まだこれからなのであります。

だから、クリントンさんも、ホントはまだあきらめちゃいけないんですよ。

この選挙人による投票は、きっちりと法律で、「12月の第2水曜日の後の最初の月曜日」と決まっています。カレンダーで見ると、今年は12月19日ですかね。

この日に、各州でそれぞれの選挙人が州都に集まって、大統領と副大統領に投票。その結果を(なぜか)副大統領に送り、それが1月早々に今回選挙された新議会で認証されて、初めて新大統領誕生になるのです。で、就任式は2017年1月20日。

おお、なかなかメンドクサイ手順があるんだね。

じつは、そのへんにまだ逆転の可能性が残されているのです。

それは、選挙人の「裏切り」

選挙人はだれに投票するかを、誓約しています。「わたしトランプね」「俺はヒラリーだよ」とかね。で、それをもとに、アメリカの一般投票者は「トランプに入れてくれるあの人」「クリントン支持者だからこっちの人」みたいに選ぶわけです。

だから、その投票の結果が、そのまま選挙人の投票にも反映される……はずなんです。

ところが、選ばれた選挙人が、一般投票終了後に「トランプに投票するって誓ってたけど、やっぱりヒラリーに投票するわ」とか言い出したとしたら、どうなると思います?

じつはじつは、案外どうにもならなかったりするんですね。

合衆国憲法にも、連邦法にも、それを妨げる規則や罰則はないんです(州法レベルではありますが、禁じているのは約半分の26州だけ。さらに罰則があるのはたったの3州)

もうおわかりですね。クリントン陣営が、なりふり構わずに大統領の座を勝ち取るには、12月19日までの間に、当選したトランプ側の選挙人に働きかけて寝返らせればいいんです。戦国大名がやる「調略」ですね。40人くらいを寝返らせられれば、ほーら大逆転。

もしも選挙の結果が逆だったら、トランプ陣営はやったかもしれない? いやいや、百戦錬磨のヒラリーだって、やるかもしれない? うん、ありうるありうる。

実際、過去には数人、選挙人投票で「裏切った」選挙人がいたことは記録されています。ただそれが、選挙結果に影響を与えるほど大勢じゃなかっただけなんですね。

まあ、法的には可能でも、道義的にはやはり許されない。っていうか、裏切る度胸のある選挙人は、そうはいないでしょうからね。粛々とセレモニー的に、選挙人投票は行なわれるものと思われます。つまらん。

じつは、もうひとつ、気になってることがあります。

それは、はなはだ縁起でもないことですが……「もし当選者が就任するまでの間に死んじゃったら?」

当選した大統領(候補)の身に、1月20日の就任式前に何かが起きたら? なんかサスペンス映画のシナリオみたいだけど(ちなみに前例はないです)

これも、法律でちゃんと規定されています。ううむ、こんなことも想定してるのか。さすがはアメリカ(笑)

はい、上記した「選挙人による投票」が終了したあとならば、通常(ってそんなにある事じゃないけど)大統領が死亡(もしくは辞職)した場合と同じく、副大統領候補が昇格(というのかな)するんだそうです。ほれ、ペンスくん、チャンスはキミにもあるぞ。

でも、その前段階だったらどうなるんだろう?

一般選挙前だったら、その党(今回は共和党だね)が候補者を再選考するのが認められるんだけど、もう投票すんじゃってるんだよね。どうするんだろう、まさかの選挙やり直しか?

このへんの規定が、ちょっと調べてみても、よくわからないんですよ。一般投票と選挙人投票のあいだの約1カ月間が、「空白の一カ月」とかになってるんですかね。

まあ死なないまでも、トランプさんが「イザとなったら、オレには無理だとわかったから、大統領になるのはやめるよ」とか言い出したら、それこそどういう処理になるんだろうね。そっちのほうがあり得るかも?

まあそんな事態は、起こらないに越したことはないですね。「トランプが大統領になる」よりも悪い事態、それは「大統領がいない」事態ですからね。

もひとつ、これは選挙中まではあんまり言われなかった気がしますが、トランプさんは史上最高齢の大統領になるんですね。

これまでの就任時年齢のハイスコアは、ロナルド・レーガン(1981年1月20日就任)の69歳349日。トランプさんがこのままツツガナク就任式を迎えれば、その時点で70歳220日。大幅な記録更新だぜ、イェイ。

となると心配なのが、トランプさん、ちゃんと任期をまっとうできるんだろうかってこと。大きなお世話だけど。

任期を終えて退任したときの年齢が70歳以上だった大統領は、歴代で何人いたかというと、たったの2人。前記のレーガン(77歳349日)とアイゼンハワー(70歳98日) 就任の時点ですでにアイゼンハワーの記録は超えていることになるのだから、なんとか2期務めれば、この記録も更新することになる。無事にまっとうすれば、だけど。

これまでに、任期をまっとうできなかった大統領は、9人いる。辞職したニクソン以外は、いずれも任期中の死亡がその原因だ。

暗殺された4人(16代リンカーン、20代ガーフィールド、25代マッキンリー、35代ケネディ)は別にすると、任期中に病気で死亡した大統領は、4人だけ。

で、就任後わずか1カ月で死亡した9代目のハリソンをはじめとして、12代テイラー、29代ハーディング、32代ルーズヴェルトの病没大統領は、いずれも死亡時の年齢が、現在のトランプさんよりも若いのだ。

と考えると、それこそ縁起でもないが、トランプさん大丈夫なのか、と思ってしまうのであります。

ぜひとも健康に留意して、任期を無事にまっとうしてほしいものです。

あれ、最後はなんかトランプさん頑張れのエールになってしまいましたが、まあそれくらいアメリカ大統領というのは、激務なのですよ。がんばれよ。

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