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大橋ちっぽけ『主人公』

著者は1985年生まれなのですが、高校~大学の時に色々な音楽のインプットをするとなると、TSUTAYA半額の時期に30枚くらい借りて、ひたすらMDに落としてました。またライブやアレンジをするときもレア音源みたいなものを持っている先輩とかから借りたりと、音源集めに必死でした。今は最高の時代。youtubeさえあればどの時代の音楽もすぐ聴ける。またサブスクの音楽サービスに加入していれば欲しい曲がその場ですぐ手に入る。
そんな時代が当たり前の現代はおもしろいクリエーターが多い。偏ることなく、色々な音楽を聴きながら、なんとなく『耳心地の良いサウンドとは何か』と言うものを突き詰めている。大橋ちっぽけも、そんあ若手クリエイターの一人。この曲を聴いたときに正直震えました。

温度感のある伴奏と声、クールなメロディー

大橋ちっぽけ『主人公』
作詞・作曲:大橋ちっぽけ
リリース:2019年8月28日

まるでセピア色の映画を思い出しながら呟くように曲は始まります。左右にパンされたシンセの音が曖昧な思い出を演出してくれます。Bメロに展開すると音数が少し増えて、メロディーもリズミカルになります。このまま進行するかと思うとサビで急にギターとバスドラ以外が抜けます、このアレンジがすごい。夢や思い出から目覚める直前のような感覚をここから得られます。また力強くなるバスドラがまるで胸の鼓動を表しているような役割を行います。
それに加えて流れるリズミカルなメロディー。ほとんど頭をふむこともなく、ものすごくブラックミュージックライクなリズムなのですがとにかくメロディーが良すぎてその不安定さも心地よいです。
ここからギターのカッティングが入り、景色一面に色がつきます。
曲全体を通してメロディーはすごくクールで洗練されているのですが、彼の声と表現力のおかげで程よい温度を持たせてます。

イントロから最後までギターがエレキである意味

この手の曲だと珍しいとも言えるくらいエレキしかなってません。イントロとかもアコギとか合いそうなのにと思うのですが、これ作品を通しての温度感の調節だと思います。アコギを取り入れると良くも悪くも暖かい感じに仕上がれます。これの温度をコントロールするためにエレキを使っているのかと思います。Aimerのカタオモイとかが同じ手法ですね。

歌詞が今っぽいけど飾ってない

僕はミスチル以降の世界と呼んでいるのですが、言葉遊びがうまいです。特にこの世代はヒップホップやラップが当たり前な音楽の時代を生きているので取り入れるのが得意なのです。例えば歌い出しです

まどろみ 窓の向こう見える景色の中に溶けて行く

いわゆる、まどろみ と 窓の の頭韻なのですが、自然すぎてスッと入ってきます。またこれをど頭に持ってくることでそれ以降の歌詞が流れ混むように体に入ってきます。
その他にもサビで

大それてると みんな笑うけど
書き換えてやろう 僕らのプロット

プロットって単語は置くとか、目標つける意味ですが、ここに急に英単語、しかもカタカナで入れることでメロディーにも締まりを見せます。めちゃくちゃ気持ちいい。

「君の気持ちが 痛いほどわかる」と
僕は歌うよ それがポップミュージック

このサビ後半の歌詞ですが、最後のサビでこうなります

君の気持ちが 痛いほどわかるよ
だから歌うの それがポップミュージック

ラストのサビだけ、カッコが抜けてます。ほぼ同じ内容を書きながら成長を感じさせる、それを言葉じゃなくて、歌詞を見ないとわからないカッコに込めるのが粋すぎます。音だけではなくて歌詞に対しての彼のプライオリティが垣間見える一行です。
これらの一つ一つがすごく自然にできていて、狙ってる感が全くない。そらがこの曲の最大の価値だと思います。

まとめ:聞くべきポイント

パッと聞きシンプルに「良い曲」なのですが、一つ一つ突き詰めると研ぎ澄まされた何かがあります。これは真似できない。まとめます

・「適温」なアレンジと歌と伴奏
・ナチュラルな言葉遊び
・歌詞を読んで初めて真実に辿り着ける作詞力

今年メジャーデビューらしいです!!声に特徴はすごくありますがクセは少ないのでドラマのタイアップとかすごくきそう!

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