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司馬遼太郎さんの名作の一つに
『関ヶ原』というものがありまして↓

当然「小説」ですから
誇張や創作は混じっていますが、
「関ヶ原の戦い」がとても
活き活きと描写されていて
面白い作品です。

最近、岡田准一さんや
役所広司さんが出演されて
映画化もされました。

で、この小説の中で
私が好きな場面がありまして
(いくつかあるのですが
そのうちの一つの場面)、

徳川家康が「使者」を送る
場面
です。

誰に? それは
福島正則をはじめとする
最前線の武将たちに対して。

「早く敵(西軍)に襲い掛かれ!」と
指示する場面です。

この時、家康はまだ江戸にいます。
福島正則たちは、名古屋のあたり。
つまり自分は後ろにいて
最前線の者たちに
「早く戦え!」と督戦する場面。

難しい人間関係がありまして。
福島正則たちは
徳川家の家来ではないんですね。
豊臣家恩顧の武将たちです。が、
西軍の石田三成憎しの感情から
東軍の家康の陣営にいる。

企業で例えて言うなら、
自社の部下ではなく、
あくまで、他社の人たち。

もちろん戦国~安土桃山時代の
殺気だっている時代の話、
現代の常識とはかけ離れていますが、

…ふつうは、まあ、遠慮しますよね。
「どうか戦ってくれませんか?」
丁寧に頼むべきところ。
実際、家康の部下たちも
「ここで福島たちが怒って
寝返ったらまずい!」と思って、
あくまでやんわりと頼むように
配慮しようとします。

ところが、家康は違う。
「いま必要なのは甘い言葉ではない。
叱責、鞭の音、これこそが大事」

忖度し過ぎる利口者を使者にしたら
ダメだ、と判断。

ということで、村越茂助という
愚直、バカマジメな男が
使者に選ばれます。
この男に家康は、
伝えるべき口上を暗唱させます。

さて、茂助が最前線に到着すると、
家康の家臣はびっくり。
「なんでこんな気の利かない
愚鈍な男を使者にしたのか?」
彼らは茂助に
「馬鹿正直に命令を伝えたら
福島殿たちが怒って大変だ!
やんわりと言え!」と
口上を変えさせます。

茂助も現場の上司には逆らえません。
「わかりました」と言います。

さて、実際に命令を伝える場面。
茂助は、口上を述べました。
…家康に言われたことを、そのまま。
現場の家臣が忖度しろと
言ったことは、ガン無視。
家臣たちは青くなりました。
福島たちが怒り狂って
大変なことになる!と覚悟しました。

…さて、結果は?

少し、小説から引用します。

『二人の軍監は汗をかき、
もはや生きた心地さえないほどだったが、
ここに意外な変事がおこった。
福島正則である。
打ってかわった上機嫌で進み出、
扇子を開いて茂助の額を大仰にあおぎ
「ようおおせられた」と叫んだ』

…家康の読みは、正しかったんです。
忖度せず、空気を読まずに
そのまま叱りつけるほうが
福島正則は戦ってくれると
読み切っていたんです。

トップからの指示。
現場最前線の指示。
それが異なった時の部下。

人選や判断について考えさせる
一場面の紹介でした。

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