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もとおりのりなが。国学者。
1730~1801年。

江戸時代に活躍した人で、
歴史の教科書にも載っている有名人です。
現在の三重県松阪市の出身。

中学校の歴史の授業などで
「江戸時代の文化」などを学ぶときには、
蘭学、国学、と並んで出てきて
蘭学では「解体新書」
国学では「本居宣長」、などと
学ぶわけですが、さて、この方、
いったい何をした人なのか?

…高校時代に日本史などで学んだ人は
「古事記の研究をして『古事記伝』を書いた」
「日本古来の考え方を追求した」
「彼の講義は自宅の『鈴屋』で行われ
『鈴屋大人』(すずのやのうし)と呼ばれた」
「国学の四大人の一人」
など、詳しめにご存知かもしれません
(Wikipediaの概観にも載っています)。

ただ、ここで書いてみたいのは、
彼の「本業」について、です。

彼が生まれたのは「木綿仲買商」の家。
商人の家に生まれました。
身分制度の江戸時代ですから、
基本、商人の子どもは商人です。
ただ、次男だったので、
すぐに家を継ぐということはありません。

11歳で父親を亡くします。
16歳で江戸の叔父さんの家に見習いに。
19歳で紙商人のところに養子に出されますが
3年後に離縁しています。

で、22歳の時に店を継いでいた
家族が亡くなってしまって、
実家の商売、お店を継ぐわけなんですが、

この本居宣長、お店をたたんでしまいます。
要するに、うまくいかないんですね。
たぶん商売には向いてない人だったんです。

さて、何をしよう、と悩みまして
お母さんと「キャリア相談」をします。
出た結論が「医者になる」こと。
当時は今のように医大に行く必要はなく、
国家資格も必要ではありません。
江戸や京都など、大都市に行って
有名なお医者さんの下で学べば
「私は医者です」と名乗ることができた。

…今の感覚で言えば
「占い師」に近いかもしれません。
やぶ医者、なんて言葉がありますが、元は
野巫医者、怪しいまじないで病気を治す人、
なんていうのが由来だそうで。
江戸時代における「抜け道」「自由業」、
腕一本のフリーランサーのようなものです。

その遊学先の京都で出会ったのが、
医学と、そして、国学なのでした。

当時は、漢方医学が主流でしたので、
漢文が読めないとお話にならない。
ということで、儒学も学びます。
この儒学の先生が、堀景山という人で、
漢文にも詳しいのですが
古文や国学にも詳しいという
守備範囲の広い学者さんでした。

その先生の影響もあってか、本居宣長は
国学に「ハマってしまう」
医学ももちろん勉強するけれども
国学をそれ以上にがんがん学んでいく。
京都、という土地柄も影響がありました。
日本文化の粋、のような土地ですから。

1758年、ほぼ30歳の頃、
彼は故郷に帰って
お医者さんとして開業します。
専門は、産婦人科と小児科です。
つまり、本居宣長の本業は「医者」。
国学者では、ないんですね。

しかし、彼の心の中では
生活のために医療はするけれども、
国学が「主」であり、「副業」として
医師をしている感覚
だったそうです。
「医師は男子本懐の仕事ではない」
と子孫に言い残した、と言われています。

とはいえ、医療の仕事をおろそかに
していたわけでもありません。
昼はお医者さんとして患者を診察し、
夜は門人への教授や研究をする。
ですけど夜に急患が出たら、
「ごめん、ちょっと診てくるね」と言って
講義の途中でも往診に行ってしまう。
基本、真面目な人なんですね。

結果、小児科医としても有名となります。
子ども用の薬を開発したり、
「子どもが病気になるのは
家庭環境にも原因がある」と考えて
保護者も診察したりもしています。
晩年には、紀州藩に医師として
仕えたりしたそうです。

「大国学者」本居宣長は、
そんな二足のわらじをはいた人です。

若い頃、自分のキャリアに悩み、
京都に遊学して学んでいく中で
自分の「ライフワーク(国学)」を
見つけ、それを極め尽くして、
ついには後世の歴史の教科書にまで
載ってしまった人、なのです。

さて、読者の皆様は、
これからのご自身のキャリアをどう
進めていかれるでしょうか?

生まれた土地がこうだから、
家族の仕事がこうだから、
新卒でこの仕事に就いたから、
と、決めつけていませんか?
本居宣長のように他の仕事を持ちつつ
「一生ハマれる」
何かを見つけているでしょうか?
副業、複業、の意識はありますか?

かくいう私も、けっこう長いこと
さまよい続けてきたのですが、
「実用地歴」「作品を作る」など
ハマれることを少しずつですが
見つけられている気がします。

ただ、自分なりのものを探すためには
「遊学」する期間が必要なようです。
現在では、ネット上やSNS上でも
色々と遊学できます。ぜひ、どうぞ。

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