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友達はVR強姦をしない人を選ぼう

いつか、発生する事件であろうことは予想していた。

……と、いうよりも、大なり小なり、
局地的におきていた話だ。
僕自身、被害者になったこともあるのだから。

けっして、今回が特別だったわけでない。
なにかの拍子で大衆の目に止まる場所に
届いてしまっただけなのだ。


こんばんは。バーチャルの世界を飛ぶ
鳥系VTuber・翡翠ミヅキです。



2022年3月30日の18時頃。
Twitterトレンド1位にまでなってしまった
『VR強姦』。


やめてくれぇ……

これの反応に対して
VR業界への歪んだ認知が広まる危険性を感じ
筆を取りました。

まず最初に伝えたいこと。
今回の事件がおきた場所である
「VR」の世界をよく知らずに指を刺し、
茶化していいお話ではないということ。

普段からVRに没入している人と、
この世界に触れたことのない人、

今回の事件に対する印象と衝撃に、
両者大きな格差があることを、
まずは知ってほしいのです。

でなければ、
貴方が加害者になりうる可能性すらあります。

本稿は、そんな格差を少しでも埋めつつ、
どのような場所でどのような事件が起きたのかを
正しく理解していただきたく執筆していきます。

「VR強姦」という単語にピンとこない皆様は、
少し長くなりますが、
前置きにお付き合いください。


♦ 超身近になった現在のVR

さて、みなさんは、「VR」と聞いて
どのような物を連想するでしょうか。

アニメや創作物が好きな人は
『ソードアート・オンライン』の
世界でしょうか。

時にはエロ目的なんて言われることも。

最近ではスマホで見るVRも普及していますね。

「ちゃんとしたVRは高い!」

ふむふむ。そんなイメージの方も多いですよね。よく言われます。

「メタバース!」

でたわね!(;゚Д゚)



はい、そのどれもが正しいものです。
現在のVRとはまだまだ発展途上のもの。

しかしながら、この数年で、
状況は大きく変わってきています。

「ちゃんとしたVR」

およそ5年前
一般庶民には手の届かない
憧れの世界でした。

しかし、2022年現在。

今、特に普及しているVR専用機器である
『Quest 2』の価格は約37,000円前後であり
PS5よりもお手頃な価格。
VRの空間で学生に遭遇するのも
珍しくない時代になっています。

画像はAmazonの現在価格

筆者も、この『Quest 2』を使って
毎日のようにVRの世界に通う変わり者。

もはや、VRがない生活がどんなものだったのか
思い出せないほど生活に密接した機器であり、
VRの世界を生きています。

VRでは美少女だったりします


そんな中。


今回、事件が起きたのは、
近年注目度の高いVRSNS。


「VRChat」で発生した事件です。


♦ VRChatという仮想現実で生きる人々

VRChat。通称『VRC』。
VR専用の機器を使用して遊ぶVRSNSです。
※なお、モニターでもプレイは可能。

ここには様々なワールドが用意され
全世界から数百万人ものユーザーがアクセスし、
自分が好きなアバターを身に纏って
日々交流を深めています。

なお、SNSといっても
TwitterやFacebookといった感覚ではなく
イメージとしては、
オンラインゲームに近いもの。
お喋り特化のMMOといっても
過言ではありません。


……いや、それは過言かもしれない。


とにもかくにも、そういった場なのです。

そして、
現存するSNSやオンラインゲームと違うのは
「①VR機器を使うことによる没入感」と
「②あらゆる意味での自由さ」。

このふたつへの知識を深めることは
今回の語る事件がどのようなもので
なにが問題なのか
理解するうえで重要な材料となります。



①VR機器を使うことによる没入感は、体験してはじめてわかる



「VR機器を使った没入感は
 どんなに書いても伝わらないので
 体験してください」


これは、物書きとしての
敗北宣言と同義の一文です。
昔、先輩に「そんなレビューはクソだ!」と
よく怒られたものです。はい。


ただ、こと、VR機器に関しては、
この言葉を使うしかありません。

VR機器の没入感というものは本当に凄まじい
もので、どんなに語ったところで、
VR機器を初めて装着した時の衝撃や、
現実が揺らぐ感覚というものを
伝えきることはできません。

VR機器を被ってVRの世界に降り立った時、
視界にある両手は「自分の手」であり、
鏡で見える自分は「本当にそこに居る」し、
横で話す友人も「本当に隣に居る」のです。

いや、居ないんですけどね。居るんですよ。
意味わからないでしょう? 僕もわかんない。


さらに、
ふざけていると思われるかもしれませんが、
『VRC』を遊んでいると、
「VR感覚」と呼ばれる特殊能力を持った人と
遭遇する場面がよくあります。


「VR感覚」とは

「VRで見ているものや聞こえているものに
 対して、自身の体が反応する」

ことで、自分が物に触れた感覚からはじまり、
他人に触られる感覚、
ときには匂いや温度を感じる人までいます。

視界一杯がこのような映像になる


もはや、新人類?


……でも、これが冗談では済まされないのがVR。

話は少しそれてしまいますが、
僕がVRゲームで遊んでいた際に、
友人Aが放ったビームが直撃してしまった
友人BがVR感覚で痛みを覚えて
パニックに陥るという事件を
目の当たりにしたことがあります。
※これはかなり特別な例ですが。

そして、私も、状況によってVR感覚を
体感する瞬間があります。

例えば、友達と話している時に、
別の友人に視覚外から
耳元で声をかけられた時なんかには、
あるはずのない人の気配や
息を吹きかけられた感覚を覚え、
ほのかに暖かい体温を感じて
「ぎゃあっ」といって飛びのく。
……といったようなことも。

それほどまでに視覚と聴覚は
人間に没入感を与えるものであり、
今のVR機器やVRChatの世界にはそれだけの
没入感があるということです。

体験したことのない方には伝わらない感覚だと
思いますが「そういうものなんだ」と
理解していただけると幸いです。

もちろん、没入感には個人差はあります。

ただ、実際に体験して、
20人くらいがわいわいしている飲み屋街で
お酒を飲みながら人と話してみれば
現実なんて簡単に忘れます。

VRの飲み屋街で見かけた酔いつぶれている人

ちなみに、上記の説明だけだと
僕がVR感度を持つ特殊能力者のように
見えますが、実は逆。

僕はどちらかというとVR感度がないほうで、
ある人を羨ましく思っているほどです。



②あらゆる意味での自由さによって形成された現実的な文化形成


そして、『VRC』を語る上ではずせないのが、
その自由さ。

「アバターを着て、他人と話すこと」が
本来の目的である『VRC』ですが、
その目的はあってないようなもの。
この空間では、ありとあらゆることが自由です。
(※運営上のガイドラインは存在しています)

容姿。どんな姿にだってなれます。
理想の自分。理想の異性。動物。
スライム。神。その時、その瞬間に
なりたい自分で居られます。

場所。好きなところに行けます。
渋谷の交差点。新宿の飲み屋街。
“水の都”ヴェネツィア。
宇宙。アニメでしか見たことのないような
ファンタジーの世界。
いままで人類が見たことのない場所まで。
何処へだって行けます。


そんな自由が許される世界での過ごし方も、
自由です。


お友達とお喋りするもよし、
ひとりで様々な場所を巡るもよし、
路上でライブするもよし、
カメラを片手に写真を撮るのもよし、
バーのマスターになって
お客さんのお話を聞くもよし、
剣を振り、銃を構えてゲームをするもよし、
恋愛をするもよし。
友人にバーチャル同棲している人も居たっけな。

オンラインゲームの一種として
プレイしている人もいれば、
創作の場として活用する人、
パフォーマー、商売人。

そして、
もうひとつの世界として生きている人たち。

主張や主義が異なる人々が、
数えきれないほどのコミュニティを形成し、
24時間365日、
バーチャルリアリティーの世界を作っています。

アニメやラノベに詳しい人であれば、
「VR」の理想といえば
『ソードアート・オンライン』の世界を
思い浮かべる方は少なくないでしょう。

あの没入感に比べれば、
今のVRはまだまだ劣るかもしれません。

しかし、文化としては、
すでに基礎が完成しつつあり、
商品販売やイベントを利用し、
VRChatの枠を飛び越えた経済圏も存在します。

現実世界で生活しながら、
家ではVR機器を被り、
もうひとつの世界で他人と生きていく。


今、VRを身近に楽しんでいる人たちは、
『SAO』と遜色のない世界を生きているのです。


♦ VR強姦は笑えるのか?


さぁ、お待たせいたしました。
いよいよ本題です。

「VR強姦」


言葉が強っ!!

なんて恐ろしいパワーワードだろうか。
そりゃトレンド1位にもなるよ。

まず、大前提の知識をもたない人が、
これを見てあらゆる憶測を生んでいましたね。
「VR機器を装着中に強姦をされた」だとか。
そう思っても仕方がないとも思います。

なので、僕が観測した限りでの事件を
簡潔にまとめます。
(※ご本人様のことをしっかりと理解しているわけではないので、事実と違うことがあったら許してください。)


「VR空間で寝ていたら、そこに現れた人物に
 卑猥(エロ)な行為をされた」
※被害者と加害者はおそらくどちらも女性アバターを着用した男性

これは、あくまでVRChatの空間でおこなわれ、そこで完結した事件。
「物理的な被害はないが、精神的にキツい」
……といった内容でした。



すぅーーーーーー(空気を思いっきり吸う音)。



キッツいわぁーーーー(;゚Д゚)ーーーー!!


無理無理! 想像するだけで鳥肌が立つ!!
被害者の方のお気持ち、
察すると本当にしんどいです。
めちゃくちゃ気持ち悪いし怖かっただろうなぁ。



……こほん。取り乱しました。

それでは、これのヤバさみたいな部分を、
ひとつひとつひも解いていきます。


①VR睡眠という文化は、わりと普通

さて、前述したとおり、
VRChatの世界ではとても自由な行動が許され、
文化が形成されています。
その中でも、普通に見たら独特であり、
なのに
VRの住民にわりと広く親しまれているのが
VR睡眠という文化
です。

VR睡眠とは、文字通り
「VR空間で寝ること」を意味します。
つまり、VRヘッドセットをつけたまま横になり、すやすや眠るわけです。

なお、
これは寝落ちだけを意味する言葉ではなく、
その状態で寝ることを意味していて、
進んでVR睡眠をする方が多く居ます。

うん。僕も、「マジ?」と思います。

こんな重いものつけて寝るとか無理無理。

……って思ってたんですけどね。1年前は。

けれど、VRの世界で出会って、
恋愛をした方と一緒に
添い寝を経験してからというもの、
たがが外れ、
普通にするようになってしまいました。

満点の星空の下で草原に横たわって寝たり、
水中でぷかぷか潜りながら寝たり、
特別な人と一緒に寝たりするのが
最高なんですよね。うんうん。

……おっと、話がそれました。


そのように、VR睡眠という文化は、
VRChatをする人たちにとっては(賛否あれど)
わりと一般的に知られているもので、
かつそれに対するスタンスもそれぞれ。

絶対にしないさせない人もいれば、
誰も入ってこれないような場所で寝る人、
誰もが出入りできる「パブリック」と呼ばれる
空間で寝る人もいますし、
VR睡眠をする人を集う場所というものまで
存在しています。

つまり、被害者のようにVRで寝るのは、
特別なことではない
のです。


②ジェンダーを誤解される恐怖


そして、この問題を語る上で
かなりセンシティブで、かつ根深い部分が、
VR空間での性別についてです。

現在のVRChat、
特に日本人のコミュニティでは、性別を問わず、
ほとんどの人が美少女のアバターを
使用している現実があります。
9割といっても過言ではないでしょう。
※おっと、そこの男性アバターや性別不詳アバターを使っている愛すべき皆。ステイステイ。君たちの存在を忘れたわけではないですよ。

つまり、どこに行っても美少女だらけ。
かわいい女の子が大好きな人にとっては
夢のような空間です。

しかも、「かわいい!」とか「エロい!」とか、
わりと直接伝えても許される状況がありますし、
むしろ誉め言葉のように飛び交います。

かわいいは、正義なんよ。

しかしながら、どんな美少女を纏っても、
その中身の性別は変わりませんし、
ましてや人格は変わりません。

すると、どんなことがおきるかというと、
男性だけでもこんな状況になります。

①女性アバター×男性(精神的に男性)
②女性アバター×男性(精神的に男性で女性声)
③女性アバター×男性(精神的に女性)
④女性アバター×男性(男性が好きな男性)
⑤女性アバター×男性(精神的に女性で女性が好き)
⑥女性アバター×男性(精神的に男性で外見女性の男性が好き)

いまざっと思いつくだけでも
これだけ複雑な状況です。

さらに細分化し、異性が混ざり、
さらにその恋愛対象まで含めると、
混沌とした状況が爆誕します。
この闇は、VRChatのなかでも
かなりの深淵なので、
また語る機会があればお話ししましょう。

見えているものが真実とは限らない


では。なぜ今この話題を出したかというと、
今回の被害者と加害者ははたして
どのようなジェンダーだったのかは、
他人からまったくわからないというのを
理解するためです。

例えば、
自分が①、加害者が①だったら
おふざけや笑い話で済むものだった
かもしれません。

しかし、自分が①、
加害者が⑥だったと想像して、
それで本気で襲われているのを
想像してみてください。


地獄です。


また、これは自分のエピソードとなりますが、
僕は美人なアバター(自画自賛)を巧みに操り、地声が高いからか、
初めて会う野太い声の男性に
笑い話では済まない口説かれかたをされた
経験があります。
あまりの気持ち悪さで
ウィル〇ミスばりの顔面パンチ。


つまり、女性アバターを使っているからといって
女性になりきって
プレイしているわけでもないし、
その逆の人もいる。

そんな中で、
自身と合わないジェンダーを押し付けられ、
襲われる恐怖や嫌悪感は計り知れない
のです。

③そして、現実と間違えるほどの没入をしているわけで……。


閑話休題。ここで小話をひとつ。

筆者がVR睡眠を初経験した同時期です。

寝ぼけていた僕は、現実の世界なのに、
VR空間にいるような錯覚に陥り
「あ~。寝落ちた~。
ログアウトしなきゃ……。あれ~?
ボタン押してもメニューがでない。なんで?」と
2分ほど気づかなかった経験があります。ウケる。

さて。これは笑い話ですが、
今回の事件と重ねるとどうでしょか。


寝起き。
現実なのかVRなのかのわからないほどの
曖昧な判断能力。
本気で襲ってきている目の前の人物。
理解不能な状況。


恐怖


さらに、ここまで書いてきた
「寝起きでなくとも、
 計り知れないほどの没入感の中に居て
 人や状況よっては
本当に触られている
 錯覚すら覚える没入感”

という背景を加えて、
自分が襲われたと考えてみてください。



はたして、笑えるでしょうか?



まとめ

VRの世界、並びにVRChatの世界は、
ありとあらゆる可能性が実現し、
出会いで溢れる、フロンティアです。

VR機器をつけている姿は滑稽かもしれません。
美少女になっている姿を
笑われることも多くあります。
ただ、そんな声なんて霞むほどに、
「この場所に居たい」と思わせてくれる
価値がある世界です。

この世界で夢を見つけた人
この世界で生きる意味を得た人
この世界で愛する人と出会った人

たくさんの人を見てきました。
僕もそのうちのひとりです。

だからこそ、この世界の住人は、
様々な素敵な物を創造して
高らかにかかげ、叫ぶのです。



「貴方も一緒に遊ぼうよ!
 この素晴らしい世界で!」
と。


ゆえに、今回の事件により、
VRChatが不名誉な話題として
あがってしまったこと。
センシティブなあれやこれで意見が飛び交い
歪んだ認知で人々に届くことを
僕は苦々しく思います。



今回の一件で、興味を持っていたのに
一歩引いてしまった人
どうか安心してください。
この世界は、そんなに酷いものではありません。

最初はきっと大変です。
出会った人で
この世界の印象は大きく変わるから。

だけど、
そこだけが世界のすべてではありません。
素敵な人が、たくさんこの世界にはいます。
不安なら、僕に連絡してください。
ご案内します。

だから、どうか、貴方にも
素敵な出会いがありますように。



友達はVR強姦をしない人を選ぼうね!

<自己紹介>
鳥類魔術師VTberで
バーチャルフォトグラファー。
2021年ごろからVRCにデビュー。
ほぼ毎日のようにVRで生活。
プレイ時間は間もなく3000時間に達しそう。
ひえー。

Twitter:@hisuimizuki


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