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「歓迎降臨!あいさつ代わりのイライラ💛」ヒスイの毎週ショートショートnote

俺の窓からは、ヤマバトが一羽だけ見える。
窓は路上に並んだ『イライラ・ボックス』にある。
こいつは一人用カラオケだ。イライラ人が増えた20××年に政府が設置。誰でも無料で歌え、発散できる。

一人で発散できるイライラなんて、しれているけど。出勤前に歌うか……

「うるさいな!」

こんな日に限って隣から音漏れ。俺は飛び出して、隣のドアを叩きかけた。

……あれ、経理のヨシダじゃん。地味でおとなしい女。
彼女は熱唱していた。曲はオペラ『魔笛』から『パパゲーノとパパゲーナの二重唱』。
明るい曲だが、よく出勤前にこんな笑顔で歌えるな…。

ドアをノックした。
ヨシダがこっちをみる。

「おはよう。それ、二重唱じゃん。一人じゃつまらないだろ」
「サワ君、うたえるの?」
「まかせとけ、♪パ、パパ、パ、パパ♪」
「パパパパ、パパパパ♪」

俺たちは同じボックスで笑いながら、モーツァルトを熱唱した。


窓からは、二羽のヤマバトが見える。
そうか、つがいだったのか。

【了】(改行含まず408字)

本日は金曜日ですが、
あす、すてきなコラボイベントに参加するので
いつもより早めに出しますー💛

たらはかにさん の#毎週ショートショートnote。
お題は「イライラするあいさつ代わり」デス(笑)



ヘイちゃんは、こちら。
これ、わかる! 目の前でやられたら、イライラするわー(笑)


さて、今日の410字は
ある方の詩と、勝手にコラボさせていただきました。

金木犀とヤマバト

私と外をつなぐのはたったひとつの窓
ほんのひと握りのすき間しか開かないけれど
風は私にたくさんの宝物を運んでくれる
金木犀の香り
ヤマバトの鳴き声
永井荷風は日記「断腸亭日乗」にこう記す
「その性偏屈にて群れに離れ孤立することを好むものと覚し」
荷風の観察したヤマバトは一羽で暮らし
その姿に自らを重ねていたようだ
私の窓から見えるヤマバトはツガイ
しかもこのヤマバト達はどうも金木犀の枝で子育てをしている
気がつけばだいぶ季節が進んだ
ヤマバトの姿も見えない
ヤマバトが渡り鳥なのか留鳥であるのか私は知らないが
そろそろ私も飛び立つ季節だ

「必要なものは与えられる」~金木犀とヤマバト~

by ほりべえ

ふとした言葉が、どうしても忘れられないことがあります。
昨日の夜から、
ヒスイの脳内では
『私の窓から見えるヤマバトはツガイ』の一行が
どうしても消えていかなくて。

それが、こういう410字になりました。
ほりべえさん、ありがとうございます。
ヒスイにも、飛び立つときが来ますように。



さて、作中の二重唱は、モーツァルトのオペラ『魔笛』に出てきます。
パパゲーノという鳥刺し(鳥を獲る職業です)と
恋人のパパゲーナが歌う二重唱です。

パパゲーノは、職業のためか、
鳥の羽毛をまとったカラフルな衣装で登場することが多く、
ヒスイは子供のころから大好きです!

派手だもん。子どもにウケるよね(笑)。

イライラボックスの中で、ふたりがどんな風に歌ったのか、
ご参考までに(笑)。
この衣装、頭にも鳥がついてるのよね。かわいすぎる♡



明日は、すてきなコラボ企画をお送りしますー。
またね。

ヘッダーはUnsplashLT Ngemaが撮影

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