![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/77035136/rectangle_large_type_2_b93b8a6e23c3b22cf6ba14ba56bfdb99.jpeg?width=800)
『さよなら、元カレ。ブロッコリーダンス』イシノアサミさん・ひと色展 参加短編(約900字)
学校から帰ると、うちのリビングに“ブロッコリー”がいた。
モコモコのグリーンのパーマヘアが、コッチを見る。髪の持ち主は、近所に住むヒスイ叔母ちゃんだ。たしか先週はブラウンヘアだったのに……。
「お帰り、澄(すみ)」
「……ただいま」
スクールバッグを置いてキッチンへ入った。ママに聞く。
「――なに、あれ?」
ママは肩をすくめた。
「さあ? ヒスイだから」
ヒスイちゃんは、A地点からいきなりH地点へジャンプするタイプだ。さらに途中でころげ落ちて、予想もしないQ地点へ到達するタイプ。
つまり予測不能。心配するのもバカらしい。
おやつを持ってリビングに行く。ヒスイちゃんの隣に座り
「なんでグリーンにしたの?」
「ずっとやってみたかったの。でも染めようとしたら元カレに ”老けて見えるからやめろ”って言われたのよ。やりたかったのに、やらなかった。彼の好きな黒髪にした。
ずっと忘れていたんだけど、仕事でおととい彼に会ったら思い出して、めちゃくちゃ腹が立って――ねえ澄、写メ撮ろうか」
ヒスイちゃんはタブレットをかざした。あたしは仕方なくカメラに顔を向ける。顔がわからないように画像を加工してから、SNSにアップした。
たちまちコメントが入ってきた。ヒスイちゃんの友達は、みんな大ウケしていた。
だけど一つだけ、怒っているみたいな短いコメントがあった。
『グリーンはだめです。老けて見える』
発信元のアイコンはイケメンふうの自撮り写真。ヒスイちゃんが、つぶやいた。
「――こいつ、二年前と同じことを言ってる」
どこかから風が入ってきて、ヒスイちゃんの髪が揺れた。まるでダンスしているブロッコリーみたいだ。
「その髪、悪くないよ」
あたしが言うと、ヒスイちゃんはタブレットを切って、笑った。笑うたびに緑の髪がほわふわした。
「あたしも気に入ったの。さて、台所でお姉ちゃんを手伝ってこよう」
その夜、ヒスイちゃんは食卓のブロッコリーをひとりで全部食べた。食べるたびに髪がフワフワゆれた。
四月の陽光のもと、タップダンスをするブロッコリーみたいに――ヒスイちゃんの髪は、かろやかに輝いていた。
【了】
イシノアサミさんの 「ひと色展」企画に参加しています。
コラボさせていただいた色は
「【色】パーマネントグリーンNo.2 “おおらかなやさしさの色”」
です。
![](https://assets.st-note.com/img/1650704501977-r0vJBQH9pl.png?width=800)
あたたかい色づかい、やわらかい線。
心が優しくなるイラストは、ヘッダーにもお借りしました。
イシノアサミさま。ありがとうございます💛
#ひと色展
本日も、ありがとうございます。
また明日、元気なヒスイ日記でお会いしましょうね💛
ヒスイをサポートしよう、と思ってくださってありがとうございます。 サポートしていただいたご支援は、そのままnoteでの作品購入やサポートにまわします。 ヒスイに愛と支援をくださるなら。純粋に。うれしい💛