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「たった一枚の宝石・切片」ヒスイのちょっと切ない宝石410字

その日、彼は兄が最後に見た景色を眺めた。
くすんだ琥珀色の麦畑。黒玉の鳥たち。
枯れた草の匂いをかぎながら、兄についての記憶をさかのぼる。

ブルートパーズの上に咲き誇るアーモンドの花。
イエローシトリンの光がこぼれる夜のカフェ。
疲れ果てた人々と馬鈴薯の湯気を照らすファイアオパールのランプ。

世界に拒まれつづけた兄が最後に見た光景は、
サファイアの空を支える金の麦畑。
弟は立ち去る。


宝石のような男は、たった一枚の絵だけを売って、行ってしまった。

兄、フィンセント・ファン・ゴッホ。
弟、テオドルス・ファン・ゴッホ。

ゴッホの生前に売れたのは「赤いブドウ畑」だけ。
1990年、ニューヨークのクリスティーズ・オークションで、真珠色の帽子が印象的な『医師ガシェの肖像』が8,250万ドル(当時のレートで約124億5750万円)で落札された。

彼の絵にはいつも、この世の果てまで貫きとおす宝石が輝いていた。

100年後まで届く、この世の果ての光が。

【了】(改行含めず 406字)

今日は、たらはかにさんの毎週ショートショートに参加しています。
お題は「宝石男子」← 大変! さっきゼロの紙しゃんのページで知りましたが、『男子宝石』だった(笑)!!
まあ、いいか。


いろんなかたの、いろんな男子がみられました!

へいちゃんのは、これ。
裏お題の「男子・男子・男子」をうまく使ってます!

ヒスイ日記、明日はお休みですー!
また公募に落ちちゃったよ(笑)。
でも攻め所が分かったから、来月もがんばります。

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