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「800万のきゃらを」【きゃらをさん・お悔み盛り企画 参加作】

※この話はフィクションであり、きゃらをという人物は実在しません

……えっ。きゃらをさんが、亡くなった?
うそ。惜しい人を……

は? 亡くなり方が普通じゃない?
カメに踏まれて死んだ?

ねえ。
普通の生活してて、カメに踏まれるってって
あるの? 
きゃらをさん、カメ関係の仕事じゃないよ。
水道管の人だよ。

ん? そっちは、別の死に方だって聞いた?
カラオケ屋で、あまりにも高周波の音を出して
割れたガラスが刺さった?

……ありえないでしょ。
いや。
あるかも。
だって、きゃらをさん だもん。
ちょっとネットで検索かけてみよ。
『きゃらを 死因』


……うわ。
ヒット数すごすぎる。
そして、なぜ全部ちがう死因なの?

こっちはビール工場に忍び込んで、うっかりミゾに落ちたって書いてある。
ビール工場で飲みすぎ以外の試飲、あり?
あっ、試飲じゃない、死因だわ(笑)

それに、ほら。こっちは
アナコンダを食おうとして
かえって飲み込まれたって書いてある。

……もう一度聞くけどさ。
日本でアナコンダに飲み込まれるって
ありなの?


あたし。
思い出したわ。
一度、きゃらをさんと飲んだことあるの。
そりゃもう、ヤバい現場だったわよ。
あたしの横には、おひたちさんがいて
正面には 伊集院秀麿さんがいた。
伊集院さんって、すごいイラストレーターなんだけど
きゃらをさんと飲むってことは
まあ。
ねえ(笑)。

メンツを見て、とおりかかった あやしもさんが

「ヒスイちゃん、これはヤバい。マッハで逃げたほうがいいわ」
って言ってくれたんだけど。
最後の言葉は、残響でしか聞こえなかった。
だってあやしもさん、
マッハで逃げていたから。

早かった。
あの逃げ足を習得すれば、
この先ヒスイは、しぬまでダメンズを捕まえなくて済むって
気がしたわ。

あ? ああ、きゃらをさんのことね。
そう、あのとき、ど修羅場のなかで、きゃらをさんは、
ついに掛軸の虎と闘いはじめて。
まけちゃったの。
あたし、掛軸の虎が人を絵の中に引き込んでいくところなんて
はじめて見たわ。
あんなこと、一休さんにしかできないと思ってた。

あら……だとしたら、
きゃらをさん、3年前に死んでるわよ。
だって後から掛軸を見たら、絵の中にいて、半裸でケイトウのふりをしていたもん。
なぜって?
……さあ、花のふりすれば、虎をごまかせると思ったんじゃない?

とにかく3年前のあの日、きゃらをさんは 死んだのよ。
え? アナコンダに食われたのは2年前?
カメに踏まれたのは一昨日?
おかしいじゃない。そんなに大勢、きゃらをさんがいたわけ?


――ああ、そうよね。
きゃらをさんは、どこにでもいる。
いつだって、困ったときはやってきて、変な顔して笑わせて、
帰っちゃう。
それで、元気になれちゃうのよね、あたしたち。

そう、きゃらをは800万の死にざまを持つ男。
あたしたちが必要とする限り、いつだってそばにいてくれる。

ほら。
いまも、後ろを走っていったわ。
だれか助けが必要な人がいるのね。

ん、お会計?
……あ、あたしだわ、いま助けが必要なの。
財布、忘れてきちゃった。

ちょっとお! きゃらをさーん、お金貸してくださーい!
……って。
こんな時の逃げ足、まじマッハやな!!!


※この話はフィクションであり、きゃらをという人物は実在しません
ご参加いただいた、おひたちさま、伊集院様、あやしもさま、えさま、ありがとうございました。
【了】

いやあ、この企画、今日締め切りなんですよね(笑)

だからヒスイ、今日は公募2本出した上に、企画にも参加(笑)
1日で3日分働きました(笑)!

またあした、お会いしましょうね!




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