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『おれの右半分は、きみのもの』ヒスイの毎週ショートショートnote

※※今日のショートショートでは
   自然災害について書いています。
   苦手な記憶のある方、すみません……。




『おれの右半分は、きみのもの』ヒスイの410字

「暗いね……」

ユリが壊れた屋根の隙間で言った。
俺は答える。
「すぐ助けが来るよ」
静かな夜、遠くで声が聞こえる。
突然の山くずれによる被災者を探すレスキュー隊だ。

助けを求めたいけど、家は腕一本ぶんの空気穴を除いて埋まっている。叫んでも声は届かない。

ユリは目を閉じている。ケガはないが、お腹に子どもがいるんだ。
……時間がない。

覚悟を決めた。
マッチで、自分の人差し指に火をつける。



俺は特異体質。右半身は、ろうそくでできている。
火をつければ2時間ほど燃えつづける。
2時間あれば、レスキュー隊が見つけるはずだ。
ユリと子ども、そして半分になった俺を。


右手を外へ出す。
夜のなか、一本の指が燃えている。
希望の火だ。
そして俺はゆっくりと燃え尽きてゆく。




最後に手紙を書いた。
『ユリ。溶けたロウを集めて、俺の右側を作ってくれ。
左側は、きみの好きなように』

さあ、何に生まれ変わるかな。
指先に希望を感じる。

どこかから、レスキューの声が聞こえてきた。



【了】 (改行含めず409字)

今週も たらはかにさんの、毎週ショートショートnoteに参加しています。
お題は「半分ろうそく」。


へいちゃんは、裏お題の「三分豚足」にもチャレンジ(笑)
すごいすごい。
ほっこりしたわ。っていうか、
豚足を誰かと分けたくなったわ💛

今日は、自然災害をテーマにしてしまったので
苦手な方がいたら、
本当にすいません。

ヒスイも
二次的な意味で災害サバイバーでもあるので
ちょっと迷いましたが。

どんな時でも
光はあります。

そういうことです。

明日は小牧幸助さんの「シロクマ文芸」の日です。
冒頭「初夏を聴く」からはじめて
短いお話を作ります。

また読んでいただけたら、
幸いです。





ヘッダーはUnsplashVincent Chanが撮影

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