「300円は青い静脈の記憶」ヒスイのパパ日記
今日の話は
「現金だけで生きている人もいるんだよ!」という話です。
うちの父は、デジタルギライです。
電子カルテだいきらい。
銀行は窓口オンリー。
カメラは一眼レフ、もちろんデジタルじゃないやつ(笑)。
そして
支払はいつも現金。
そう、現金なのです。
クレジットカードは、ない。
これまでカードを持った事がないのです。
それで、困らなかった。
これまでは。
カード払いにすべき時は、母のカードを使っていたから。
これまでは。
先日、父から買い物を頼まれた。
6件の家へ、母の忌明け、香典返しとしてお茶を送れという。
いいよ。手配しとく。支払いはカードでいいよね。
カードの番号を教えてよ。
いや、ない。
……は?いや? 嫌じゃなくてさ
ちがう。カードはないんだ。
……パパ、あのね、困るのよ。
カードがないとネットの買い物が、困るのよ。
今回は、あたしのカードで払うから、後で現金でくれればいいから。
いや。領収書は必要なんだ。紫(ゆかり)がそう言っとった。
だから、カード以外の支払い方法にしろ。
……ネットで買って、相手のお宅へ直送してほしいんでしょ? 支払いはカードなのよ。
では、カード払いではない店を探せ。
厳命。
もともと頑固な父は、ノーカード!を叫んで譲らない。
面倒くさいが、仕方がない。
『後払い決済』が使えるネットショップを探して、手配する。
パパ、カードを一枚作ってよ。これからもいろいろ面倒だよ
いらん。
……パパはいらんだろうけど、コッチはいるんだよ!
そう思うけど、言うのも面倒くさい(笑)
だから6件分、後払い決済の手数料は合計で1200円。
あほらしい。
ほんとうにあほらしい、と思う。
思うけれども
頑固で、
強情で、
自分の言うことは枉げず、
面倒なことはだれかに押し付け(笑)、
終わってから満足そうに例を言う父を見ていたら
逆らうのもあほらしくなって
父と一緒にコンビニへ行った。
後払い決済の支払いをコンビニでやるためだ。
レジで、父は満足そうに支払い請求書を出し、
1500円を出して支払い、
300円のお釣りをもらった。
ほい。お駄賃だ。
ちゃりん、と300円が私の手に納まった。
ふわ、と記憶がよみがえる。
これと同じことを、むかし、父の隣で見た。
場所はコンビニじゃなくて、
郵便局だったかな。
そのときも、父はやっぱり現金派で、
お札で支払い、お釣りをもらってた。
……ほい、お駄賃だ。
ちゃりん、と硬質な音を立てて100円玉がおさまった先は
うすく汗をかいていた、母の掌だった。
夏だったんだろう。
母愛用の、アイボリー色の日傘が、
手首に賭けられていたような気がする。
母の手首の静脈が、
白い皮膚の下で、青い約束みたいに輝いていたのが、
いまでも私の眼の裏側に
残っている。
ママ。
この先は、私がパパのお釣りをもらう役目になるみたいだよ。
帰り道、父にもらったお駄賃で、黄色いガーベラを買った。
忌明けだもんね。
もう、白い花じゃなくても、いいんだね。
ママ。
本日は、NNさまの企画に参加しております。
お父さんって
何歳になるまで、お駄賃をくれるんだろう(笑)
#ひとり66日ライラン
#出戻りライラン・笑
#31日目
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