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理想の手帳を、この手で作っている話

手帳が好きだ。
毎年下半期に入ると買うのも行事、それが楽しみな手帳。
PC依存症でiPhone依存症でネット依存症なのに、予定はアナログな手帳。
ラクガキやメモ書きのアウトプットは、わたしにとって、大事なストレス発散でもある。

気に入って購入し、使い始めてもイマイチだと、買い直すほどには理想の手帳に飢えている。

マンスリー、ウイークリー、デイリー、キャラクターもの、ファンシーなもの、黒革、うっすいもの、分厚いもの、父が取引先からもらったノベルティもの、仕事関係でもらった見た目は堅苦しいのにコッソリセクシーお姉さんの写真が月ごとに入った今は昔のなつかしいもの…
おそらく、この世のほぼすべての手帳を使ってきた(大げさ)。

以前、2017年ごろ、ネットで自分の手帳をデザインできるサービスがあった(ネットde手帳工房)。
手帳ユーザーが少なかったのか、自分で選択し使いやすいものを考えるほどの手間はかけたいひとが少なかったのか、コストが見合わなかったのか、その全部なのか、2年ほどでサービスは終了してしまった。

わたしも作りたくて、ユーザ登録したものの、200ページという設定はなかなかのボリュームで、試行錯誤しているうちに、サービスが終わってしまった。

しかし、わたしはただの平凡な会社員であるが、作るオタクでもある。
サービスが終了したくらいで、わたしの創作の炎は消えないのである。

そうして、”ネットde手帳工房”をきっかけに、理想に近い手帳を「選んで買う」ということから「作る」ということを考え始めた。
世界にひとつしかない、わたしによるわたしのための手帳を作ろう。

その1.開き方にこだわる

手帳は書き込んでこそのもの。
そのために開き方は重要で、手で押さえずともパカッと開いて書き込めることが絶対条件。
開き方にこだわるには、冊子の綴じ方が重要となってくる。

昨今の印刷物などで一番メジャーなのが、【無線綴じ(むせんとじ)】と呼ばれる、印刷物の一辺を糊付けして綴じる方法。
メジャー中のメジャー、超メジャー級、製本界のヤンキースである。
しかしこれは、パカッと開くと糊が割れてしまったり、くっついた紙がはがれてしまったりする。また、開いたところが跡になってしまうこともある。
正直、手帳には不向き。
(でも昨今、この無線綴じのなかでも、PUR製本という、綴じる糊が従来よりも少なめで、耐久性も高く水平に開くのが可能な綴じ方も出てきている)

次にメジャーなのが、印刷物を重ねて真ん中をステープルのような針金で止めている【中綴じ(なかとじ)】
こちらもメジャー中のメジャー。ページ数の少ない高級なカタログなんかに使われている綴じ方。
これはいい感じに開く。
ただ、手帳のような薄い紙だと、止める針金に負け、使うたびに耐久が下がっていく。
そして錆びる。
不向きではないが、向いているというか、妥協、というレベル。

では、「市販の手帳ってどんな風にできているの?」ということだけど、それは【糸綴じ(いととじ)】。(かがり綴じともいう)
この、糸綴じを少部数でやってくれる業者さんはないのか、と連日、この世をさまよう未練に縛られた地縛霊のごとく、仄暗いインターネッツの果てを歩き回ったが、存在しない。
検索に疲れ果て、気づけは正月休みは蒸発していた。

色とりどりの袴の若者がニュースで報じられているころ、死んだ魚のような目で糸綴じの検索をするたびに、動画が引っ掛かってくることに気が付いた。

自分でできる 糸綴じ製本|Sea Lemon
笑顔の外国人女性が、紙を綴じ、本にしていた。

検索に溺れるあまり、忘れていた。


わたしは作るオタクである。


憑き物がとれたように、無意識に「なんだ、作ればいいのか」が口をついた。

その2.とりあえずサンプルのサンプル

そうとなったら、サンプル作成だ!
DTP経験を活かし、ある程度使えるAdobe illustratorCS4を開く。
真っ白なアートボードを眺め少し考えた。

何から作ればいいんだ?
どうやってページを組むんだ??
わたしはどんな手帳がいいんだ??????
サイズは?
縦?横?
月曜始まりなのは譲れないけど、マンスリー?ウイークリー?

自分のことがまったくわかっていなかった。
手帳を使って20年以上だというのに。嘆かわしい。
「これだ」と思う選択理由を基に、手帳に求める機能を振り返ってみる。

原稿を描くオタクとしては、日程が生命線だ。
オタクの本は一朝一夕では制作できない。
参加イベントの日があり、そこに照準(発行日)を合わせ、ネタを揉み、下書きの下書きをつくり、下書きをし、清書をし、仕上げ、印刷屋さんに入稿し、印刷してもらい、当日を迎える。
それを日常生活とともにやっていく、まったくもって頭のおかしい、大変素晴らしい趣味である。

あと何日ある?と視覚で見えるのは、過去の自分による、未来の自分への心理攻撃として最も有効な手段なのだ。

そのために、ウィークリーでは日程が見えきらない。
そもそも、平々凡々のペーペーOLなので、会議が一日中詰まっているようなスケジュールは年に数回あるかないか程度。休日出勤もほぼない。
つまり、ウィークリーである必要がない。

かといって、原稿は1か月では終わらないのでマンスリーでも全日程が見えない。
それから、マンスリーによくある、正方形に近いマスがどうも使いにくい。

そこで、2か月を見開きにすることとした。
週末が何度あるのか、だいたいわかる。

そうなると、より一層縦長がいい。
A4を横にして、1/3のサイズ。
長3定型郵便に入るサイズ。
以前、そんなコピー紙を作って「このサイズ可愛い」と記憶もあった。
早速、A4のコピー用紙を取りだし、折ってそのサイズにしてみた。

うん、このサイズだ。(直感)

見開きの2(ツー)マンスリー。
脳内に湧いたその言葉の響きは、バスケットの攻撃布陣のようにも聞こえた。(幻聴)
1ページにひとつきのマンスリーはあったかもしれない。
それが並ぶと見た目は2マンスリーには見える。

でも、それだけじゃ描ききれない、溢れる妄そ…ネタは、いつでも書き留めたい。そのためには、見開き2マンスリーのあと、メモスペースの見開き。よし、この4ページセットでいこう。

世界は広いので、どこかにあるかもしれないが、いまだかつて出会ったことのない[2か月見開き+メモ見開き]を思いついたわたしは天才じゃないかと悦に入った。

サイズとスケジュール部分は決まった。
とりあえず、動画のほかにも検索で見つけた、糸綴じ本の作り方を参考に、【台(だい)】というグループを作ることにした。

糸綴じ本は、まず小さなグループをつくり、それを糸で綴じる。(=台)
さらにその”台”を糸で綴じてまとめる、という2段構えで綴じる。
(番号をふってしまったものだが、これが1台分↓)

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細かいことは省略するが、きちんと本にするには、ページの組み合わせが必要となってくる。
2枚を真ん中で綴じると8ページ。
4枚なら16ページの”台”となる。
とりあえず白い紙を切り落とし、その4枚でいくつか台を作り、目玉クリップでまとめてみた。

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それだけで冊子の形になるので、「おお、手帳ができそうだ!」と脳が錯覚する。思い込みは大切だ。

できたサンプルのサンプルの冊子っぽいソレに、赤鉛筆で、ここに2020年と2021年のカレンダーを…ここから1月&2月見開き、そのあとはフリーメモ見開き、んで3月&4月にフリーメモ見開き、とイメージしながら順番に振っていく。2か月見開き+フリーメモ見開きで1枚4ページだ。

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内表紙1ページ
2020・2021年のオール日程見開き2ページ
2020年が計4×6セット=24ページ
オマケで21年1~4月で4ページ。
残りは巻末フリーメモいっぱい。
ラストページ(連絡先)1ページ。

ネタメモ魔でもあるオタクのわたしは、フリーメモページマシマシつゆだくマシマシ。
路線図も手と足の裏のツボも、別にいらないな。アドレス帳もいらない。
と、整理して全48ページの大まかなページ割とデザイン案が決まった。

その3.サンプルをつくってみよう

Adobe illustratorCS4が、わたしのWindows10の中で静かにその時を待っていた。

前職がDTP屋であり、描くオタクでもあると生きるのが楽しい。
つくるエネルギーは生きるエネルギーである。
だって手帳って、予定を書くものじゃん?
これからの製作物の案を書くものじゃん?
(わたしはね)
おぼえがきも、覚えていたいから書くわけで。
手帳ってやつぁ、エネルギーの塊なんだよね。

話がそれた。

先に作ったサンプルのサンプルを、ふたたびバラバラにする。
月やメモ欄を赤鉛筆で振ってあるので、印刷するときの組み合わせがこれでわかる。
知能指数が高く、脳内でページの順番を振らずともスラスラでてくる天才ではないので、凡人はとりあえず形にするとイメージが湧きやすく間違いにくい。

数字を振って、曜日を振って、B罫くらいの間隔で線を引いて、カレンダーができていく。
自分だけのものなので、カレンダーを社用にできるのも利点。

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4枚16ページで1つの”台”としているので、①ページめの組み合わせ相手は⑯ページ目。
そんな、ページの組み合わせが煩雑なので、未来の自分に恨まれず、ラクをさせてあげるために、きちんと整頓してデータを作成してく。

中の表紙に、自分が描いた適当な推しの絵を置くと、俄然テンションが上がった。単純って幸せだ。
これから一年、スケジュールの推しとともに、推しの本を作れるのだ。(正しくない)

プリントは、自宅にあるプリンタにがんばってもらおうと思う。
ちゃんと位置が合うのかな?とかいろいろ不安ではあるけど、Adobe illustratorCS4を信じ無心で配置していく。

とりあえず配置が終わり。
とりあえず間違えないように、順番に両面でプリント。
ものごとはすべて「とりあえず」でいいのだ。
つくるということは、まずはそこからなのだ。
使って、また作って、だんだんと研鑽されていくのだ。

真ん中で二つ折りにして、目印の線どおりに余白を切り落とす。
最近は、100円ショップに500円で紙のカッター台が売られていて、紙をスパスパ切るのがとても楽しい。
それを台ごとにまとめる。

そして、動画や綴じ方解説のサイトを参考に、真ん中に千枚通しで穴をあけ、糸を通して綴じる。
綴じられた台をまとめて一冊にし、表紙をテープ糊で適当にくっつけてみた。

おお。

もっとぐずぐずゆるゆるになるのかと思ったが、そんなこともなく、形としては思ったよりもずっときれいにできた。
すぐ天才だと思うわたしは、初めてでこのクオリティ、天才か!と思った。

つくるということは、とりあえずでもやり通せば、その先に完成があるわけで、何を作っても、形になると「本物ができた!!!!!」とアドレナリンとセロトニンが最高潮に分泌される。楽しい。

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見よ!この完成度!!!
真ん中が、糸で美しく縫われているのがおわかりだろうか。
(付箋は、誤字脱字だったり、デザインがおかしかったりしたところの目印。大量。)

いいの、とりあえず形にするのが大事なの。

その4.まとめ

もっと苦戦すると思っていた糸綴じ。
不器用なので、グダグダになると思ったのに、想像以上にピシッと仕上がって拍子抜け。先人の技術というものは素晴らしい。不器用なわたしでも「また作ろう」と思えるレベルで、とても簡単だった。

気づいたことや、加えたい部分などを、このままサンプルを使っていくうちに考えよう、と思い、続行中。
時間が経つと見えてくる誤字脱字に、欲しいおぼえがきメモのページ。

8月も下旬、そろそろ2021年の手帳を形にしようと、実際にやったことを簡単にまとめた。(長いけど)

簡単手順
1)どんな手帳にしたいかのイメージ固め
2)とりあえずそれで、実際に紙を折って、まとめて形にする
3)ページを振って、不足していたり余分のページを調整する
4)バラシて、データをつくる
  わたしはAdobe IllustratorCS4を使用したが、Excelでも可能な気がする。
5)プリントして、余白をカット
6)台ごとに糸でまとめる
7)複数の台を糸でまとめる
8)表紙をくっつける

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表紙は、一般OLに擬態するため、あくまでシンプルで、とくになにも表示をしていない。

実際に使った道具や、ここがわたしのオリジナル!と思うページの紹介は、後日別記事で、マガジンとします~
興味がある人はのぞいてみてねヽ(^o^)丿


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