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歯科検診でホメられた話

わたしは歯医者さんが大きらいだった。
20代半ばくらいまで。

幼少のみぎり、それはそれは、泣き叫ぶわ歯科医師さんに噛みつくわ蹴とばすわ、大立ち回りの大変な疲労具合で、夜はぐっすり眠れるほどだった。
おそらく、類を見ない騒ぎだっただろう。
(当時の歯医者さんごめんなさい)

そして、ロクに歯医者に通わずに十代、二十代を過ごした。
虫歯だらけの奥歯を鎮痛剤でごまかし、鎮痛剤が効かない痛みは半べそで仕方なく行った。

とにかく、避けたいのが歯医者さんだった。

27くらいになったころだったと思う。
とにかく歯が痛くなった日があった。泣いた。
夕方、近所にある歯科医のうちの1軒の歯科に電話して、事情を説明して行ってもいいか聞いた。
診療時間の終わり間際だったからか、電話に出た人は、冷たい対応だった。
「今日の診察はもう終わりですので」

諦めようかとも思ったが、近所に新しい歯医者さんができていた。
そちらにかけてみると
「つらいでしょう。大丈夫ですよ、すぐ来てください」
と、優しい対応だったので飛んで行った。

そこは、女医さんが経営する歯医者さんだった。
しかも、歯科助手さんたちの制服がエプロンドレスのようなデザインで、とても可愛い。
皆がちょっとなまっているのも可愛い。

少々荒っぽい先生ではあったが、手早く処置を終え、頓服の痛み止めもくれて、急患を受け入れてくれたことの感謝をしつつ、帰路についた。

可愛い制服の歯科助手さんたちにキャッキャウフフと囲まれ、女医さんに口の中をいじられるという行為に、なんだか、未開の扉が開かれてしまい、ためらいもせずに次の予約を取った。

家の近所だったせいもあり、通いやすく、新しい病院だったからか、予約も取りやすかった。待合室のブラックジャックも通う理由の一つ。
毎週毎週足しげく通った。

麻酔が聞きすぎて、すぐ気を失うように寝てしまうわたしに手を噛まれる先生に何度も起こされたりもしたが、モリモリ治療は進み、数年後、ついにわたしは虫歯/ZEROに到達した。
ブラックジャックも読破した。

虫歯がなくなった。
どこも痛くない、何もしみない。

なんという幸せか。
自分でもびっくりした。

あんなに大号泣で歯医者さんを蹴っ飛ばして(ごめんなさい)まで拒否していた歯医者さんが楽しみになるなんて。

そして、ガッカリもした。
もう、あの雰囲気は味わえないのだ、と。


しばらくして実家を出た。
そして、ある年のお正月、ミルキーをむさぼり食べていたら、長年のかぶせものが無残にとれてしまった。

住んでいる市には、中学の同級生が歯科医を開業していたので、行くことにした。
彼の病院のHPを見ると、もともとは歯科医嫌いの彼の話と趣味の車の話でいっぱいだった。変な病院HPだけど、『「どうしてこんなんなるまでほっといたの?」とは言いません』、というモットーで、行きやすそうだなと予約を入れようとしたら、1か月待ちでびっくりしたのだった。

人気の理由は、腕のいい彼の技術と、夜遅くまで開いていることらしい。
診察台で、久しぶりに再会したところ、
「俺は腕は確かだから心配しなくていい」
と、カッコいいことを言ってきやがった。
院長の知り合いということで、カルテにマル院マークが押され、ちょっと嬉しい(笑) 治療は100%彼になるらしい。

「虫歯ないじゃん。治療終わってるね、ちょっと粗いところはあるけど」
自分で言うだけあって、実際、技巧派だった歯科医師くんは、少し残念そうだった。
取れてしまったかぶせもの付近は、十代のころの治療だったため、だいぶ年季が入っているので、すべてかぶせ直してもらうことにした。
(ミルキー悪くない)

通っているうちに、待ち時間にハミガキのしかたを教えてくれたりして、いつの間にか、歯ブラシだこができるほど、ハミガキをする時間が長くなっていった。

そして、半年もしないうちに、虫歯/ZEROになったわたし。
歯周病もほぼないようで、お墨付きをもらって、通院は終わった。

数年して受けた職場の健康診断に、いつの間にか歯科検診が無料で加わっていたので、申し込んでみた。

案内されて座った診察台で、あの、よくあるピンクに染まる歯垢チェックを初めてうけた。

「あれっ」

歯科助手さんの、患者?を不安にさせる声が聞こえる。

「一度すすいでもらっていいですか」

言われるままにすすぎ、もう一度試薬を塗布される。

「あっ すごい、歯垢ないですね。歯茎もきれい。ハミガキお上手なんですね」

マスクはしていたけれど、満面のほほ笑みで歯科助手さんが褒めてくれた。
自分では達成基準がよくわからないことで、プロのかたに褒められるのはなんか嬉しい。ちょっとドヤる。

そして、先生の検診。
歯科助手さんがやや興奮気味に先生に報告。
「先生、ヒスイさん、歯垢ないんですよ。ここまでない人めずらしいですよね」
「ほう…ハミガキが上手なんだね。
ハミガキってね、小さいころから誰でもやるのに、意外とみんな自己流なんだよね~」
着席しながら、わたしの口を覗き込みながら続ける。
「ほんとだ。よくできてるね。これからも続けてくださいね」

大変な褒められようで、照れくさくて、ふへって笑って答えてしまった、コミュ障全開。
ハミガキを褒められるのって、なんかこどもっぽい感じがするけれど、先生が言うには、よくできないまま大人になっている人が多いとのことで、素直に喜んでいいようだった。

普段誰に褒められることもない40女。
ひさしぶりの大褒め回だったので、しばらくはウキウキだった(単純王)


なお、オススメのハミガキ粉は、ピュオーラ。
よく磨けてれば、翌朝口が臭くないのも素晴らしい。
チューもできる。たぶん。

歯ブラシは、いろいろ迷走したけれど、長時間(30分くらい)磨く派なので、ブラシが硬いと歯や歯茎に負担なので、軽い力で磨けるDAISOさんのやわらかめ3本110円の歯ブラシ。
ものすごく柔らかいので、すぐクセがついてしまうけど。
(熱湯につけるとすぐ戻る)
持ち手(ハンドル?)部分がクリアカラーで可愛い💖

ハミガキはいいよね。
小さいころからの習慣で、みがくとしばらくものを食べなくなるので、ダイエットにもなる!!!!!!たぶん!!!!


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