見出し画像

アナログ造形:『KILLING ROMMEL』(2014年作品)(その4)

前回(↓)の続き。

トリオの魅力

この1/35ジオラマ作品「KILLING ROMMEL」では、3人の登場人物がいます。ドライバー、リーダー、機関銃手、の三人です↓。

キャラ立ちを考えたトリオ編成

強くインスパイアされているのはスピルバーグ映画の名作「ジョーズ」のトリオ。海洋学者クーパー、船長クイント、警察署長ブロディですね。

この3人も、それぞれ彼らのようなトリオをイメージしながらキャラ作りをしました。あの映画を観た人なら誰が誰の隠喩になっているかはなんとなく分かるかもしれませんね。正解は

・ドライバー=海洋学者クーパー
・リーダー=船長クイント
・機関銃手=警察署長ブロディ

です。

学者肌のドライバーは地理や戦略の専門家。リーダーはタフな歴戦の勇士。機関銃手はちょっと慎重派だがそれゆえに敵を発見するのと射撃が上手い。みたいなイメージです。

映画「ジョーズ」では警察署長ブロディは海が苦手な気弱なキャラで描かれています。しかし危険を察知したりサメをいち早く発見したりと要所要所での判断能力は3人の中で一番優れている。サメのスペシャリストではないが最後に敵を仕留めたのも気弱な彼でした。そういう視点で見るとあの映画のブロディ署長の立ち位置がとても興味深かったりします。

私は小さい頃から今に至るまで、あのトリオの人間描写が大好きです。それぞれが強みと弱みを持っている。それらの強みを組み合わせた時、最高のチームが出来る。それがこのジオラマ「KILLING ROMMEL」でトリオ編成にした最大の理由です。

音楽にしてもそうですが、「二人組のデュオ」はどうしてもどちらかが引き立て役になったりしますね。もちろん、それで大ヒットするデュオも多いです。ただ、スケールが広がるかというと少し足りない。デュオは少し閉じた世界観を演出するのにピッタリなイメージを感じます。広がる世界観を演出するケミストリーが生まれやすい最小編成はトリオだと思います。

ドライバーの造形

映画をヒントにしたと言っても、それぞれをそっくりにする、というわけではなくあくまでもインスパイアです。それぞれのキャラは自分の思い描くキャラを作っていく事を心がけて造形しました。

特に自分で気に入ったキャラはこのドライバーです。特にこの面構えが自分でも気に入った造形です↓。

トラックに収まった完成図です↓。私の"クーパー"の完成です。

トラックとフィットさせるのには非常に苦労しました。この作品では芯を入れずにそのままスカルピーで造形しました。そのせいで焼きを入れる時に若干変形したり縮小したりして焼成後にトラックにフィットしない現象に悩まされ制作が難航しました。何度か焼き直しをして完成した苦労の一発です。

リーダーの造形

リーダーのキャラづくりは一番最初に行いました。ヘッドも一番に完成しました。人の言うことを聞かない、自分の経験とカンに絶大な自信を持っている頑固者のイメージです↓。

デュオが完成しました。ただ、前述のデュオとトリオの話で書いたように、デュオだと二人の世界、少し閉じた世界観です。さらに世界観をスケールアップするケミストリーを産み出すために、どうしてもあと一人必要です。
そこで登場させることにしたのが、次に紹介する機関銃手です。

機関銃手の造形

映画「ジョーズ」でいうところのブロディ署長、これがこの機関銃手です↓。

右手は銃と一体化させて作ったため、ボディとは別で造形しました。彼は「少し神経質だが敵の発見力と銃の腕だけは確かな慎重派」、というイメージですね。

トリオ完成と最小編成の魅力

というわけで3バカトリオ・・・ならぬ、私の中の「クーパー・クイント・ブロディ」が完成しました。

トリオ編成にすることで、ぐんとストーリーと世界観が広がったのが分かるのではないでしょうか。

以上、これが私がこの作品のフィギュア表現で伝えたかった、

「1/35スケールのフィギュア作品は単体作品ではなく群像表現によってより引き出される」

という思想と哲学です。

次回は、小ジオラマの「鑑賞作品としての情景表現」について語りたいと思います。

ではまた。


(続きの記事↓)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?