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Steam Deckに期待

Linux界隈に軽い衝撃が走っております。あのSteamがAMD+LinuxベースのハンドヘルドゲーミングPC「Steam Deck」を発表しました。


Valve携帯型ハードウェア市場参入のインパクト


以前からちょくちょくWINE関連で書いていますが、ゲーム界大手プラットフォーマーのValveは長い間WINEベースのWindows互換レイヤーProtonの開発に注力しており、それをベースにした独自OS「SteamOS」も開発しています。

私は常にWINEの最新バージョンを追っているのですが、Protonの開発が加速してからWINEにもフィードバックも増えたのでしょう、WINEのバージョンアップも加速した感があります。今年頭に6.0がリリースされたのに、すでに6.12になっています。互換レイヤーの進化加速はValveの存在の大きさを証明しています。

そのValveがArch Linuxベースの携帯型ハードウェアをリリースする、ということはかなり大きいです。Linuxは「抱き合わせハードウェアが少ない」のがなかなか普及しない理由のひとつだと思うので、これはインパクトあります。

Linux系YoutuberのGardiner Bryantさんも、「Linuxゲーミング関連ではここ数年で最大のニュース」と興奮気味にレビューしています。

冷静でシビアなレビューが好印象の「 The Linux Experiment」チャンネルも概ね良いレビューをしています。

Steam Deckがヒットすれば完全互換普及をもたらすのでは、と期待しています。逆に、「Linux版をポートしなくてもWindows版もそのまま動くよ」ということを売りにするのはどうかな?という指摘もしています。
互換レイヤーがそんなに優秀ならネイティブ対応しなくても良い、対応はProtonの性能に責任丸投げという流れになる可能性も・・・という懸念です。これには私も同意です。


Linux普及のカギは「Linux」と名乗らないこと

以前から思っていたことですが、Linuxを普及させるために必要なのは

「Linuxという名前を使わないこと」

だと私は思っています。
目的と相反するようですが、これって真実だと思っています。理由はこの4つの事実が証明しています。

・Androidの世界的シェア
・ChromeBookの爆発的なシェア拡大
・サーバーサイドのLinuxシェア
・Amazon FireTVのヒット


いずれも「Linux」という文字は一切ありません。これらは全てLinuxベースですが、「Linux」ということをウリにせず、「出来ることを明確にしてその機能にフォーカスすること」をウリにして大ヒットしています。

私が「Linux」という言葉を使わないほうが良いという理由は、「Linux」という響きが、「TECHギーク」「なにやら難しい」「エンジニア向け」「ツウ好み」というイメージとセットだからです。そのマインドセットがあまりに強力なのです。

OSといえばWindowsしか知らない、Mac知ってるけど使ったことない、というような一般マジョリティ層はMacですら未だにキワモノ扱いです。Linuxと聞いても知らない人も多いでしょう。逆に少しパソコンを知っている層は完全に前述のマインドセットです。昔少しLinuxをかじったことある層でもいまだに「Linux=コマンドライン」と思っている人も多いと思います。

SteamOSもLinuxベースですが、Linuxであることを出さずに「Steam OS」として打ち出して行くほうが良いと思います。まず、名前とやることが一致していて分かりやすくて良いです。

「SteamでゲームするからSteam OS」

これ以上に分かりやすいOS名はないでしょう。変にLinuxを推さないほうが良いと思います。

ジワジワ浸透のその先

Chrome OSがオフィスアプリはクラウドでOK、ということを証明し、MSもオフィスアプリのクラウド化を進めています。Word・Excelなどのオフィスアプリはまだデスクトップ版が機能も使い勝手も良いですし、これがWindowsからみんなが離れられない最大の理由です。

今後、Linux版デスクトップMSオフィスが出る可能性はかなり低い気がします。そこに期待するよりもクラウド版の進化に期待するほうが良いと思います。Google Docs / Spreadsheetもリリース当初から使っていますが、着実に進化していると思います。

Steam OSが「ゲームはSteam OSでOK」ということを証明すると、ゲームベンダーもSteam OSを無視できなくなり、ネイティブ対応が普及するでしょう。「そうなること=他のLinuxでも動く」となります。

Windowsの最大のアドバンテージである

・ゲームが出来る
・MS Office
・Adobe

のうちの2つはジワジワと代替可能になっていきます。

あとはアドビだけですね。これがラスボスかも。

懸念材料

(過去の失敗)
Steam OS搭載ハードウェアは過去に2度(Steam MachineとSteam Link)失敗しています。ただ、当時は単に時期尚早だったのでは?というのが私の印象。ハードウェアとProtonとLinux側の進化が理想とされるレベルまで及んでいなかったのが大きな要因に思えます。今回の場合はProtonの進化とLinux側の進化、ハードウェアの進化、時代の流れによる世相の変化、ポータブルでお気軽サイズであることが組み合わさっているのでそこに期待。

(Proton依存によるLinuxポート率の鈍化)
Linux+WINE(Proton)の大きなハンデは、その性能そのものではなく
「互換レイヤーなのにWindows以上の性能を求められること」
です。
ネイティブ版ではないのに「なんだ、Windowsのほうが速いじゃん」となる。逆にTomb RaiderのようにLinuxネイティブ版がパフォーマンス良いことはあまり認知度が高くない。つまり、同じ土俵に立てばLinuxのほうがパフォーマンスが高くなる可能性を秘めているのにも関わらず、あまりその点に目を向けられないことです。

(ユーザー側のマインドセット)
「Windowsじゃない=✕」
「素直にWindowsにすればいいのに」
「ゲーミングPC=Windows一択」
というようなユーザー側のマインドセット。これも意外に強敵と思います。
Windows信者は自分たちがApple信者に対して思っている以上に信心深い人種と私なんかは思ってます。Windows信者はMac信者をまるで世間知らずかAppleに洗脳された可愛そうな人達のようにディスったりしますが、Windows信者もなかなか強力です。

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