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Web制作業界に就職するあなたへの手引き(その3)Webサイトの価値と目的とは?

未経験や他業種からWeb制作業界で働き始める方を対象に、基本的な知識を身に付けていただくための座学連載、第3回です。前回は「Webサイトの利用のされ方」についてお話ししました。

今回は、企業がWebサイトに求める価値と目的について取り上げます。連載の第1回で「Webサイト制作の仕事はなくなってしまうのか?」という話をしましたが、これを理解している人は企業からの依頼が来る、理解していない人には来ない、まさに分かれ道ともいえる重要なポイントです。

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Webサイトの価値=情報

Webサイトをその道のプロフェッショナルに依頼して制作する場合、それなりに多額の予算をかけます。個人商店などでは別だと思いますし、あくまでわたしの経験でのお話になりますが、事業活動を行っている企業であれば、一度のリニューアルや新規Webサイトの立ち上げのために、少なくとも200万円から、多いときには数千万円くらいの予算になることが多いです。しかも、一度整備したら終わりではなく、数年に一度はリニューアルを継続している企業も多いかと思います。

そこまでのお金をかけてWebサイトを持つからには、企業はそれに見合った価値を感じているということです。その価値をひとことで言ってしまえば、Webサイトとは「情報」であり、「情報をインターネットに置くこと、そのものに価値がある」ということになります。

これはECサイトでもそうでなくても、基本的には同じです。ECとは「Eコマース」の略で、インターネット上で商品を販売し収益を上げることを言います。このECは、別にWebサイトを持たなくてもできるわけです。

Amazonや楽天などのモールに出店しても良いですし、独自のショップが持てるサービスも色々と存在します。中には、既存システムでは対応できないから独自にWebサイトを作るしかなく、開発して欲しい、という依頼もあります(*1)が、あくまで少数派です。

オンラインで販売するにしろ、しないにしろ、Webサイトを持つ理由は必ず、「自社を知ってもらうため」です。「え、そんなこと?」と思うかもしれません。自社を知ってもらうと、何の役に立つのでしょうか?

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Webサイトの目的=営業活動or採用活動

Webサイトの価値は情報だというお話をしました。それでは、自社について知ってもらうことが、具体的に何につながるのでしょうか。

B2Bサイトでは、ほぼ問い合わせの獲得がゴールになります。B2Bとは、Business to Businessの略で、企業対企業の取り引きのことです。

発注先を探している担当者が、サイト上の情報でサービスや製品について興味を持ち問い合わせをすると、受注側の営業担当者が直接コミュニケーションを取り、あとは担当者同士の商談の末に成約となります。そのために、Webサイトがカタログセールストークの代わりになります。

もしくは、セミナーや展示会など、オフラインでの商談の機会を告知し、来場してもらうというゴールもありがちです。

また、B2Bのサービスは日常生活で購入するような商品と違い、そもそもなぜそれが必要なのかが分かりにくく、またその良し悪しにも専門的な知識が求められることが多いため、関連する知識を啓蒙するという目的にもWebサイトが使われます。

B2Cでも様々なゴールがあります。B2Cとは、Business to Customerの略で、企業対一般消費者の間のビジネスのことです。

まずオンラインでの売り上げオフライン店舗への来店促進と言った目的は、B2Bと似たような目的と言えるかもしれません。加えて、ブランディングという、具体的な売り上げに直接つながらない目的もあります。

一度の取引が高額になる一方、何度も繰り返し契約するようなものではないB2Bの場合と異なり、B2Cの場合では少額の取引が生活の中で何度も、生涯にわたって繰り返されるという特徴があります。顧客に継続して自社の商品を選んでもらうために、自社のファンになってもらうのが必要になるわけです。

いずれにしても、広い括りで言えば営業活動とまとめることができるでしょう。

もうひとつのWebサイトの大きな目的が採用活動です。現代では就職活動の際、求職者は必ずWebサイトから情報収集しますので、他社よりも魅力的に見えるよう、企業サイトから独立して学生のためだけの採用サイトを整備する企業も多いです。

情報には力がある

これらのWebサイトの役割に対して、実はまだまだ多くの企業が、その重要性に気づいていないのも事実です。「弊社は対面の営業活動でうまくいっているから、Webサイトなんていらないよ」「弊社は説明会に学生がたくさん来ているから、Webに力を入れる必要なんてないよ」そういう方は、実際にまだいらっしゃいます。

しかし、自社のことだけを考えず、ほんの少し競合他社もWebサイトを持っているという事実に思いを馳せてみてください。

顧客が競合他社の情報にアクセスし、競合の営業担当者と繋がることのいかに簡単なことか!優秀な学生や転職希望者が、魅力的な競合他社のアピールに触れることがいかに多いことか!

少し考えれば分かります。それこそが、情報があふれる現代における、情報の重要性なのです。

Webサイトに予算をかける企業は、情報格差を放置するのがいかに危険なことかを知っています。Webサイトに載ってない新製品、新事業は存在しないも同じ。Webサイトが魅力的でない企業は、就職先の候補から黙って外されているのです。

この情報の力を理解していないクライアントには、プロが理解して提案しないといけませんし、理解しているクライアントからの依頼を受けたければ、なおさら受託側が深く理解していることが必要です。理解していない人に任せられるのは作業だけ、それはAIでも構わない、ということです。

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なぜわざわざ独自のWebサイトを持つのか?

情報には価値がある、というお話をしました。ここで、カンの鋭い人は、「それなら、Webサイトにお金をかける理由としては不足では?noteやYouTubeにだって情報は載せられるし、なんなら他のコンテンツの関連に表示されて勝手にアクセス数も増える。しかも無料で使えるし、いいことづくめでは?」と思ったかもしれません。ここに発想が及んだ方はかなりスルドイと思います。

これは全くその通りで、自社のWebサイトに置いた情報だけに価値があるわけではなく、当然企業としても、SNSや各種ニュースサイト、動画共有サイト、様々な媒体を使いこなしています。しかし、情報発信のチャンネルを増やせば増やすほど、情報発信にかかる人手も増えますし、それらのチャンネルで発信するメッセージの管理も大変になります。

また、プラットフォームが急に人気がなくなってアクセスが全く集まらなくなったり、その結果サービスが終了したりというリスクも存在します。私がこうしてnoteで書いているコンテンツも、noteが大きくイメージを落とすような事件を起こしてサービス終了でもすれば、たちまち読めなくなるわけです。

また、自社のブランディング、イメージ戦略を重視する企業も、プラットフォームに依存するのを避けます。質の悪い、怪しげな情報が自社コンテンツの関連情報に出てきたり、そもそも自社のイメージカラーとプラットフォームの色合いが全然違ったりという理由などがあります。

これらの理由から、まずは自社で管理するWebサイトを起点に考える企業が多いのです(*2)。

今日のまとめ

Webサイトにはどう言った役割があり、それがいかに価値を持つのかというお話をしてきました。このように重要な役割を持つWebサイトに、前回の記事で触れたように、来訪者は一瞬しか滞在しないのです。ここに、クライアントに信頼されるプロフェッショナルが研鑽を続けるべき理由があります。

情報の価値という話に関連して、次回はWebそのものが持つ社会的意義についても少し補足していきましょう。


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*1 これまでの経験では、既存のECシステムは服や雑貨などよくある商品ラインナップの販売が念頭に置かれていることが多く、オプションが無数にある工業製品や、フレームとレンズという特殊なラインナップのメガネの販売などではうまく使えないことが多かったです。

*2 説明が冗長になるので補足に回しましたが、上場企業では様々な情報の開示が義務付けられており、そもそもWebサイトを持たないという選択肢は事実上ありえない、という状況になっています。参考:上場会社とは②~上場会社の情報開示~

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