ガタンゴトン
ひっさびさの超満員列車だ。人ってこんなに細くなれるんだな、とか思いながら友人と茨城に帰る。
俺のリュックを疎ましそうに見つめるかなりデカいハゲ。服とかが入ってるんだ、ごめんよ。
ハゲが睨もうと列車はガタンゴトンと揺れている。
誰かが嘔吐する音に反応して皆が一斉に振り向く。しかしそこに吐いた人も吐瀉物もない。何にもない一点に皆の視線が注がれる。そこには確かに不確かな吐瀉物が散乱していた。
霊霊が吐いても列車はガタンゴトンと揺れている。
前で女性が眠りながらもイヤホンをして音楽を聴いている。微かな音漏れの「いきのこり●ぼくら」が私に生を託す。
終戦の平和の中列車はガタンゴトンと揺れている。
俺のスマートフォンの中では中島みゆきが自称「世界一のブサイク」を激励する。中島みゆきがメールを読む声が護摩行のような火を連想させる。静かな怒りだ。あんたはあんたのままで、おいでよね。
砂を纏ったまま列車はガタンゴトンと揺れている。
俺が降りた後も列車はガタンゴトンと揺れるのだ。
脚色は凄いけど全部今日あったこと。
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