実家の夜

明るすぎるし賑やかすぎる。

やけに冴えた頭を抱えて起き上がる。窓の外を見てみる。夜明けはまだまだ遠そうだ。頭の上に随分明るい白い星がある。少し離れたところにそれよりは幾分か小さな星もある。だがそれだけだった。月はない。煌々とした街明かりだけが部屋の中をくっきりと浮かび上がらせている。

喉が渇いた。

両親たちを起こさないようにそっと階段を降りる。台所へ行ってコップに水を汲む。電気はつけていない。物のよく見えること見えること。
3口ほど飲んで器を軽く注ぐ。またそっと階段を上って部屋に戻る。布団に座って目を閉じてみる。

睡魔はまだ迎えに来ない。

新聞配達のバイクの音がする。遠くで救急車のサイレンが鳴っている。目を開いてもう一度窓の外を見上げてみると薄雲が空を覆い始めていた。それが分かるほど街の灯りは相変わらず爛々としている。
人の声が聞こえる。かなり若い。飲み会でもしていたのだろうか。かなり大きな声だったのに聞こえるのはいつの間にかアスファルトを車が走る音に戻る。

いつも1人で暮らしているところと違って虫の声がしない。木々のさざめきがない。布団に横になる。大型車のエンジン音が家の前を通って行った。ベッドタウンなのにここはどうやら眠らない街らしい。幼稚園の頃に越してきて、大学進学で家を出るまで10数年過ごした街の夜だ。

深く息を吸い込んでみる。そこの陰から小さな睡魔がひょこっと顔をのぞかせた。


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