見出し画像

確定申告とバルザック

基本的に起業家精神(アントレプレナーシップ)がなく、給料をもらう安定した立場を維持したうえで、いろいろ個人的に好きなことをやりたいと思っているので、いままで税金関係のことは、考えずにすみました。というより、面倒なので考えたくありませんでした。

だから毎年やってくる年末調整の書類も、しっかり毎年忘れているので、面倒くさいな、と去年の記録を引っ張り出しては、ときに事務の人に教わりつつ片付けては、また翌年まで忘れる、ということをくり返すばかり。まあ、それで日々、税金のことを考えずに済んだのですから、御の字でした。

しかし、今年は生まれて初めて確定申告をせねばなりません。そのことを話題にすると、某先生からは「かわいい」と言われてしまいましたが(たしかにいい歳してウブですね)、いよいよみずから税金に向き合わねばなりません。

こんなときは、有象無象のネット情報ではなく、経験上、入門書に頼るのがよろしい。というわけで確定申告を解説している本を買ってみました。

いや、知らなかった。そういうことだったのか。恥ずかしながら収入と所得の違いすらわかってなかったので、源泉徴収だの控除だのの正確な意味・概念を知るだけでも、へぇ、となります。

そして一時所得に雑所得のこと。なんと! 必要経費というのがあるのか! こんなものまで必要経費として認められるのか! とウブに驚きます。幸い、高額の物は領収書が残っていて、あと、いまはデビットカードや電子マネーで買い物をすることが多いので、なんとか計上できそうです。

医療費控除も存在は知っていましたが、病院への交通費(公共の交通機関)まで認められるとは知らなかった。また、医療費が10万円にいかなくとも、ドラッグストアなどで買う薬代が1万2千円以上だと、そちらで控除を受けられるのか(セルフメディケーション税制)。

ふるさと納税も、例によって面倒なのでやったことがなかったのですが、仕組みがようやくわかり、これはたしかにやる価値はありそうだとようやく理解。

ふうむ、知らないことだらけ。そして発見が多い。世のなかはこんな風に動いていたのか。

面倒で避けてきたものの、気合いを入れて向き合うと、なにしろ生活に関わるお金の話ですから、こうした税制そのものに、生活すなわち人生が色濃く滲んでおり、けっこう、いやかなりおもしろい。

そこではじめて、ああ、これはバルザックだ、と気がついた次第。散々、金をめぐる悲喜劇を描いてきたバルザックですが、それもこうした法制度を駆使しただまし合いが肝。そこには愛憎のドラマがあります。そうか、確定申告はバルザックの世界なのか。これがおもしろくないはずがない。

いままで避けてきたのがもったいないほど、おもしろくなってきました。なにごとも経験ですね。なんだか毎年の確定申告がたのしみになりそうです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?