京都滞在のご挨拶もかねて、彦根在住のAさんのもとへ。となれば、近辺の「久足史跡」(なんてね)を訪ねなければ。
そこでJRと近江鉄道を乗り継いで日野駅に降り立つ。日野商人のいとなみをしのびつつ町並みを歩き、日野商人館などに寄りながらも、目当ては正明寺です。
ここでいう山王社というのは、井林(いばやし)神社で、折しも祭りの準備の最中でした。
そこから歩いてすぐ、正明寺です。
気持ちのいい参道を通って門にいたりますが、閑寂ないいお寺ですね。久足のいう額もしっかり残ってます。
「そもこの寺は、後水尾法皇の御ゆえよしある寺にて、御尊影もましますよし」とありますが、やはりここでも後水尾への尊崇の念を示してますね。
さて、ここから歩いて石塔(いしどう)寺へ行こうというのが、今回の旅のメインです。およそ歩いて2時間弱の道程のはず。
なんてことのない記述ですが、こういうルートこそ、追体験したいですね。
すべてのんびりした田舎道を予想していたのですが、石塔寺からの細道を抜けると、すぐに工場団地があり、大型トラックが行き交う大動脈があって面食らいます。そういえば、水が豊富で地の利のいい滋賀県は、意外に工業県で、有名企業も多いんですよね。まあ、道というのは合理的なものですから、むかしの道がいまも大動脈として活躍しているのは、無理もないこと。とはいえ、風情もなにもあったものじゃありません。
しかし、旧道がいまのバイパスと重なる道をちょっと外れると、誰一人歩いていない田舎道です。これが気持ちいいですね。
折しも桜の季節、満開の桜を独り占めです。
久足は、「地獄越」(また紹介します)を前にして、次のような感慨を漏らしますが、京都のすばらしい桜に感嘆しつつも、「有名ではない」けれど、見事な桜なんて、全国いたるところにあるわけで、いろいろ考えさせられます。
さて、そんなことを思いつつ田舎道を歩いていると、お目当ての石塔寺です。
「この寺の門のほとりより見あぐるばかり高き石階をのぼるに」という階段が、これ。
そして登り切ったところで目にした光景は、圧巻でした。
周りには、何万ともいわれる五輪塔があり、それも相俟って、息をのむような光景です。
写真じゃサイズ感が伝わらないかもしれませんが、約7.5メートルもあるんですよ。
ちなみに久足は「うへの五輪ばかりは後につくりそへたるなるべく、そこばかりあたらしく見ゆるは、おぎなはざるかたなかなかよろしきやうにおぼゆ」と書いてますが、たしかに補ってますね。
しかしその後補も久足が見たと思うと、感慨深いものがあります。
石塔寺、久足に導かれなければ一生行かなかった可能性が高いですが、おかげさまで、よい経験ができました。
それから桜川駅まで歩き、近江鉄道で彦根へ。彦根では、Aさん宅でたいへんなごちそうをいただいて、旧交を温めつつたのしい時間を過ごすことができました。