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エリアF -ハレーションホワイト- 25

 15学年の成績を、なんとか個人データのハックにより乗り越えたこともあったが、無事17学年を卒業したぼくは、その後研究課程のコースに進んだ。そしてそこで3年間、人間の生理学を専門に学び、そして自分の望む、その専門を生かした仕事に就くことができた。その仕事?もちろん「再教育センター」である。

 「再教育センター」こそが、最先端の技術の集約された、人類最高の知性の集合の場である。「再教育システム」がたずさわる領域は、医学、生物学、心理学、化学、物理学、哲学、数学など非常に多岐に渡り、かつそれらの最高レベルを必要とする。だからこの「再教育システム」は世界の最高機密であり、ここに触れることの出来る者は、人類の中の選ばれたエリートのみである。そういう最高レベルのところで働くことももちろんぼくのひかれるところではあった。
 
 しかし、それより何より、人間の持っている力を最大限にまで引き上げる「再教育システム」は、人間一人一人の個性を生かすことによって社会に貢献する、最高の仕事だと思ったからだ。

 だからいつの頃からか、ぼくは「再教育センター」に就職することを一つの目標として、努力するようになった。

 「再教育センター」で使われている「再教育システム」は、おそらく人類の発明したものの中で、最もすぐれたものだと、ぼくは思っている。人類の英知の結晶だ。

 例えば、会社が社員を、現在の仕事に不適応だと、あるいは会社に不要だと考えた場合、以前なら閑職に追いやる、退社勧告する、解雇するなどで対応してきた。しかし現在は、社員に対して「再教育センター」に行く事を勧める、あるいは強制的に「再教育センター」に入所させるなどの対応をする。また社員が、自分で今の職業が合っていない、能力が発揮できないと感じたときは、社員自ら進んで、「再教育センター」に入所する事もできる。

 「再教育センター」では、それら不適応の原因がどこにあるか探ることになる。肉体的なもの、精神的なもの、過去の経験や行動様式なども全て調べて、どこにその原因があるか特定するのだ。社員の側に問題がある場合は、それを「再教育システム」によって、改善する。「再教育センター」の最も重要な仕事だ。単に職業との不適合であれば、その者に合った仕事を斡旋する。これも「再教育センター」が行っている。社員の側に問題がない場合は会社の側に問題がある事になるので、その会社に対して、社員の再雇用と社内のシステムの改善とを命令する事もできる。

 仕事についてだけではない。学習についても同じである。平均より著しく劣っている生徒は、「再教育センター」に送られ、さまざまな検査、調査がなされる。学習能力そのものが劣っている場合もあるし、集中力が欠如している場合もある。目の機能が劣っていて学力が上がらない子供も比較的多くいる。それらを細かく調べ、何が原因かを特定し、そして改善するのが「再教育センター」の役割である。

続く


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