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エリアF -ハレーションホワイト- 10

 Web内での移動は、原則は徒歩となる。歩いてどこへでも行けるし、Webについての知識のない者は、とりあえず歩くしか移動方法はない。

 すこし慣れてくると、自転車に乗る事ができるようになる。もちろんこの「自転車」というのは仮想のもので、正確には「自転車程度の速度で移動できる技を身につけた」と言うべきである。ただ一般に「自転車程度の速度で移動できる技を身につけた」者たちは、自分の体を自転車に変形して移動するのがマナーであるから、見た目は本当に自転車に乗っているようなのだ。スケボーなんかに扮している者もいる。

 知識をたくさん得て、技を磨いた者は、オートバイや自動車に乗る事もできる。「カバ」がバイクに乗って暴走していたのは、自分の能力を見せびらかしているのでもあるが、もっとレベルの高い者にとっては、たかがバイクごとき、ちゃんちゃら可笑しいことだ。

 わずかではあるが飛行機の操縦のできる者もいる。ぼくのような最高レベルの技術を持っている者は、例えれば超音速のジェット戦闘機を乗りこなせるようなものだ。

 いくら高速で移動できるといっても、当然限界がある。そして移動している事は、誰にでも知る事ができる。移動が高速であればあるほど、検知されにくい。それは現実社会で、歩行者の顔を見るより、自転車に乗っている者の顔を見ることの方が困難であるのと、同じようようなものだ。ただ、高い技術を持っている者は、高速の移動でも確実に検知することができる。データ処理の能力が高いからだ。

 ぼくはこのWeb内の移動について、革命的な方法を生み出した。それは論理アドレスの移動。Web空間のデータが保持されているメモリの、論理アドレスを超えて移動する方法である。これはつまり、Web内にいる人間から見れば瞬間移動したように見える方法である。移動時間はゼロであるし、移動の軌跡も存在しない。

続く

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