「名言との対話」11月17日。青木雨彦「サラリーマンは男らしい仕事である」
青木 雨彦(あおき あめひこ、1932年11月17日 ‐ 1991年3月2日)は、日本のコラムニスト、評論家。
神奈川県横浜市生まれ。神奈川県立横浜翠嵐高等学校、早稲田大学文学部仏文科を卒業し、大学大学院修士課程を修了した。在学中は「早稲田大学現代文学会」に所属し、中学以来の友人で後に直木賞作家となった生島治郎、そして小説家となった高井有一、富島健夫、長部日出雄らとともに活動した。
東京タイムス社に勤務し学芸部長まで務めている。その後、学習参考書編集者を経てコラムニスト・評論家になる。
1972年から1978年まで『週刊朝日』に「人間万歳」を連載し、40歳代はユーモアとペーソスあふれる「アメヒコ節」で人気を博した。早川書房の『ミステリマガジン』誌では、読者の誌上登場コーナー「街角のあなた」のインタビュアーなども行っている。
1978年には『課外授業 ミステリにおける男と女の研究』で第31回日本推理作家協会賞評論部門受賞した。
青木雨彦は1964年から亡くなるまで以下のタイトルの本を書きまくった。総計で77冊だ。特に49歳からから58歳までの10年間は毎年5冊のハイペースで出版している。以下、書籍のタイトルをあげてみよう。
事件記者日記 。昭和ヒトケタ社員 サラリーマンにとって男らしさとは何か 。昭和フタケタ諸君 サラリーマンはカッコわるいか。ノンフィクション百科。男の仕事場 昭和ヒトケタの唄。この見事な人たち 男らしさを求めて。男の履歴書。男の家計簿 泣くなサラリーマン。男の子守唄。中年老い易く。夜間飛行 ミステリについての独断と偏見。会社嫌い 言っちゃナンだが。男の長電話。おとこの身辺博物誌。課外授業 ミステリにおける男と女の研究。男の歳時記 サラリーマン考現学。洒落た関係。にんげん百一科事典。冗談の作法。優しくなければ… 。サラリーマン反道徳精神のすすめ。人間万歳 男性篇/女性篇。大人の会話。男と女のト音記号。つき合い方知ってますか 男と女 奴と俺 親父・女房その子ども。このすばらしき「天才」たち。女はいつもミステリー 。遠くて近きは… 。雨彦流当世文章作法。サラリーマン武士道。男の日曜日。一刀半断。男の博物誌。嘘でもいいから… 。ああ、男ごころ。男の更衣室。雨彦のにんげん博覧会。深夜同盟。長女の本 顔もいいけど心がきれいだ。よせばいいのに…。男のティータイム。男と女の泣きボクロ。こっそり教えます。人が見える人が読める人間講座。せめてこれだけ… 。男と女の集積回路。男の知らんぷり。雨彦の実用読書術。男の帰り道。女と男の方程式。女と男は因数分解 女ってナンだ?男ってナンだ?どっちがスゴい?。共犯関係。雨彦のにんげん四季報。悩みは人のためならず 雨彦流人生虎の巻。男と女は混線電話。粋な関係。しごとが面白くなる平家物語 組織を活性化させる人間関係のつくり方。はじめてコラムを書く。人間関係の技術!。男のためいき女の寝息。男と女講座フォー・ユー 。雨彦のPTA会長奮戦記。男の風上 サラリーマン戦陣訓。嫁ぐ娘に贈る言葉 父親が思うこと、希むこと、託すこと 。スピーチのコツ、教えます コラムでトーク。酩酊証言 ミステリと恋愛。会社万葉集 「光る話」の花束。共犯関係 ミステリと恋愛。どんとこい漢字・熟語 遊び感覚であなたも博士。ザッツ・コモンセンス 雨彦の交遊話題 。脱オバサン講座。ことわざ・故事成句、ああ勘違い 陰で笑われないために。古今東西男は辛い。自己啓発読本。ことわざ雨彦流。こっそり教えます 。偽証転々 ミステリと恋愛 。さいごの雨彦流。
「履歴書」「家計簿」「博物誌」「考現学」「武士道」「四季報」「戦陣訓」「万葉集」などの言葉がおどり、すぐに食欲がわいて手に取りたくなるようなタイトルがついている。
青木雨彦の週刊誌のコラムは、時々読んでいたし、名前はよく聞いた。日本の短い絶頂期の1980年代のサラリーマンの哀歓を描いた作家である。残念ながら、青木雨彦の本はきちんと読んでいないので、著書紹介を引用してみる。
『男のためいき 女の寝息』。人生の哀歓、人情の機微が滲む名エッセイ。男たちの惑いとあきらめ、女たちの怒りと密かな夢が交錯する。わかっているようでもわかっていない男と女の奥深い関係を、自分を語りつつ綴って雨彦節が冴える。
『大人の会話』。どんな名探偵でも決して解決できないのが男と女のあいだの微妙な関係。そんな男と女が、時には洒落れのめし、時には照れながら、そして真面目に語る大人の会話。プロンジーニ、フランシス、フリーマントル、マクドナルドなどの海外ミステリの睦言(ピロートーク)を俎上にのせて、男と女の機微を、鋭く、けれど優しい眼で浮き彫りにする、心優しい大人のための洒落れたエッセイ。
以上の二つは、男女の機微についてのエッセイ集だ。以下は、サラリーマンへの応援歌だ。
『男の日曜日』。家でゴロ寝じゃもったいない。どうして過そう日曜日。そんなサラリーマンに捧げる、どうすりゃいいの人間のための自立読本。「男子、厨房に入らず」と言い出したのは、いったい、どこの、どいつだろう? 焚火にあたるのにもルールがある。知っていますか、そのルール?……一所懸命働いて、やっと休みの日曜日。サラリーマンにとって、遊ぶことは学ぶこと、学ぶことは遊ぶこと。家でゴロ寝じゃもったいない。どうして過そう日曜日。そんなサラリーマンに捧げる、どうすりゃいいの人間のための自立読本。
『男の博物誌』。サラリーマンは男らしい仕事である。 出世の競争もあろう、自分では選べない上司の理不尽なふるまいもあろう、無駄な会議も多かろう……。 だが、愚痴を抑えて、ラッシュの電車にもまれ、少しばかりの酒にやりきれなさを託しつつ今日も働いている、この健気な戦士たちを男らしいと呼ばずして何といおうか?
私もその一員だったが、この時代の猛烈サラリーマンへの応援歌だ。皆これらの本の内容にうなずき、苦笑し、そしてやはり励まされていたのだ。コラムニスト、エッセイストの役割は、ここにある。今は「令和」の時代、「昭和」は遠くなりにけり、だ。
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