4月6日。原田明夫「起こったことは仕方がないのだから、そのことを前提に最善を考えよう」
原田 明夫(はらだ あきお、1939年11月3日 - 2017年4月6日)は、日本の検事総長。
東京地方検察庁検事に任官。在アメリカ合衆国日本国大使館一等書記官時代にはロッキード事件で日本の法務・検察と米司法当局との橋渡し役を務め、前例のない嘱託証人尋問の実現に奔走した。法務省刑事局参事官、法務総合研究所教官、盛岡地方検察庁検事正、法務大臣官房長、東京高等検察庁検事長などを経て検事総長を異例の3年務めた。
以上が法務官僚としての輝かしい経歴であるが、ライフワークを持っていたことについて触れたい。盛岡岡地方検察庁勤務時に新渡戸稲造の思想にふれ感銘を受け、司法、検察の中枢に身をおきながら、新渡戸研究を続けた人である。
その過程で「対決と和解への 条件一 新渡 戸博士 に 学ぶ 」という論考も書いている。「国際連 盟 が 『平和の た め の 砦の 前哨基地』 に 例 え られ て い るの は 当時の 連 盟 事務局で 働 く人 々 の 心 意 気を示す もの で あ ろ う。〜 民族、 言語 、 宗教 、 思 想 、 … 利 害 を超 え て 、 『友 」 とい うだ け で 受 容 し、 そ の 存 在 を認め て 、 安 全 な 帰 還 を願 い 、 ま た い つで も歓迎 す る と い う… 『願 わ くは わ れ 太平 洋の 橋 と な らん 』 と祈 っ た博 士 に と っ て 、 こ の 合い 言葉の 贈物 は どん な にか 慰 め とな っ た で あ ろ う」 と語 っ て いる。原 田 は 退官 後 い つ か は こ の“ 杜 と水 の 都”に 居住 した い と知人 にも ら して い た という話もある。
検事総長退任後に、新渡戸稲造が初代学長であった東京女子大学理事長にもなっているのも縁であろう。就任前には「多様性と共生への視点-世界で・社会で・家庭で-」というテーマで、法の専門家としてのご経験をもとに、争いのない社会を築くために何を拠りどころに考え、行動すればよいのか、新渡戸稲造の視点に触れながら、現代社会や教育などの諸問題について講演を行っている。
原田明夫は、検事として、取り返しのつかない人生を送りかねない人に向き合ううちに、「起こったことは仕方がないのだから、そのことを前提に最善を考えよう」という心境に至った。国際社会で活躍し尊敬を集めた新渡戸稲造という先達と対話し続け、どのような存在をも認めた上で争いのない社会にするために最善を考えようしたのであろう。
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