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11月22日。平野雅章「これ(食物のことわざ)は、わたくしたち日本人の祖先がみずから体験しくふうし確かめ語り伝えてくれた食生活のエッセンスです」

平野 雅章(ひらの まさあき、1931年1月15日 - 2008年11月22日)は、食物史家である。

早稲田大学第二文学部心理学科在学中から北王路魯山人に師事し海外旅行にも同道し、料理と美術を学ぶ。主婦の友社に勤務ののち、食物文化史の研究に従事し文筆活動を行う。テレビの人気番組「料理の鉄人」「トリビアの泉」などで魯山人の弟子として紹介され、審査員もつとめた。「味ごよみ」「しょうゆの本」「魯山人味道」「美味真髄」など著書多数。

『食物ことわざ事典』を読んだ。食物に関することわざ、日本人の祖先が体験し、工夫し、確かめ、語り伝えてくれた食生活の知恵のエッセンスだ。1項目2ページで120項目の解説は、歴史、地理、言い伝え、古典の知識、故事、和歌、俳句、料理法などが凝縮されている。一編一編に著者の熱意が感じられると同時に高いコストと多くの時間がかかっていると思わせる名著だ。

鮟鱇の待ち食い。一膳飯は食わぬもの。うまいものは宵に食え。梅はその日の難のがれ。えぐい渋いも味の中。大きな大根辛くはなし。かかあの顔は三品。午前中のくだものは金。こんにゃくは体の砂払い。酒・飯・雪隠。砂糖食いの若死。サンマが出るとあんまが引っ込む。しゅんに食べるのが食通。食器は料理のきもの。田作りも魚の中。強火の遠火で炎を立てず。冬至かぼちゃに年取らせるな。土産土法。ないもの食おうが人のクセ。夏は鰹に冬鮪。包丁十年塩味十年。茗荷を食えば物忘れする。、、、。

この本を読みながら、日本人の食生活は、「ことわざ」の中に生きていることを痛感した。「まえがき」には「書き始めから終わりまで、おのれの物知らずにさいなまれ、恥をかき書き、たどりつきました」とある。難産であったことがわかる。

食の分野に限らず、短いことわざは、人間の知恵のエッセンスであると改めて思った。この叡智をできるだけ引き継いでいきたいものである。

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