見出し画像

「名言との対話」8月11日。岸恵子「身が持たないほどの仕事があるとわたしは生き生きとする。何もすることがない状態はわたしを腑抜けのように虚しくする」

岸 惠子(きし けいこ、1932年8月11日 - )は、女優・作家。

神奈川県出身。1951年松竹から「我が家は楽し」で映画デビュー。1953年「君の名は」で人気スターになる。1957年渡仏し映画監督イブ=シャンピと結婚。「おとうと」「細雪」などの映画,「修羅の旅して」などのテレビドラマに出演。1975年離婚後もフランスと日本で活躍。2011年フランス芸術文化勲章コマンドールを受章。著作に「巴里の空はあかね雲」、日本エッセイスト・クラブ賞を受賞した「ベラルーシの林檎」などがある。

岸惠子『わりなき恋』( 幻冬舎)を読んでいる。大女優・岸恵子(80歳)の10年ぶりの話題の小説だ。孤独と自由を謳歌する、国際的なドキュメンタリー作家・伊奈笙子、69歳。秒刻みのスケジュールに追われる、大企業のトップマネジメント・九鬼兼太、58歳。この二人の大人の恋愛を描いた作品。70歳を迎える女性の恋愛心理と情事の場面はよく描かれている。

以下、メディアのインタビューで語られた岸恵子の言葉から。

「苦労話として思い出すより、蓄積されて今日の自分になったと思う方がいい」「人生の終盤に虹が立つような華やぎがあってもいいんじゃない?」「私は若く見えているんじゃなくて、気持ちが若く老いて見えないだけ」「友達は女が一人、男が一人居れば十分ということです」「孤独の裏には自由があり、自由の裏には孤独がある」

2021年5月発刊の『岸恵子自伝』(岩波書店)を読んだ。

「戦争体験、女優デビュー、人気絶頂期の国際結婚、医師・映画監督である夫イヴ・シァンピと過ごした日々、娘デルフィーヌの逞しい成長への歓びと哀しみ……。その馥郁たる人生を、川端康成、市川崑ら文化人・映画人たちとの交流や、中東・アフリカで敢行した苛酷な取材経験なども織り交ぜ、綴る。円熟の筆が紡ぎ出す渾身の自伝」との解説がある。

「身が持たないほどの仕事があるとわたしは生き生きとする。何もすることがない状態はわたしを腑抜けのように虚しくする」。その代償は、離婚であり、娘との悲しい関係であり、「仕事になりすぎて、この世界で一番大事な娘を、ほったらかしにした不埒な母親であったことに気づいて愕然とした」との悔恨になる。

岸恵子は現在89歳か。私のいう熟年期の初めの80歳で初めての恋物語「わりなき恋」を書き、今度は自伝を書いたことになる。熟年期(80歳から)の仕事を年譜で調べてみる。81歳、吉永小百合との共著「歩いて行く二人」(世界文化社)を刊行。82歳自ら演出した朗読劇「わりなき恋」に出演。84歳m「愛のかたち」(文芸春秋)より刊行、菊池寛賞受賞。86歳、「孤独という道づれ」(幻冬舎)を刊行、フランス文化賞を受賞。88歳、日経新聞「私の履歴書」を執筆。そして89歳、「岸恵子自伝」の出版となる。

この本の「終りに」には、「高齢にもかかわらず、まだやりたいことが山ほどある、我武者羅なわたしの生きかた」と記している。この人が熟年期を過ぎて、95歳からの「大人期」をいかに過ごすのか、見届けたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?