どうやって本を選ぶか?

毎月中旬頃に翌月の日ごとに取り上げる人物を決めることから始まる。次にその人に関する本をアマゾンで調べる。本人が書いた自伝があれば、それが最優先だ。自伝は自己弁護が多く、内容をうのみにすると危ないという面もあるが、本人はどう考えていたか、思っていたということが一番よく分かる。やはり肉声の魅力は捨てがたい。次に伝記である。伝記は絶賛型が多いが、その人のことについて、生い立ち、先祖、祖父母、両親、兄弟からはじまって、学校時代、職業を得てからの仕事ぶり、そして死去するまでの事績がよく調べられているから参考になる。本人の書いた著作がある場合は、そのうちの一冊を手にする。私がよく読むのは、エッセイ、随筆だ。これには、日常生活がわかることもあるが、本音がストレートに出ていることが多いので、人物研究にはありがたい資料となる。

それをアマゾンで注文する。たとえば、5月分は4月の中旬の段階で、それぞれの日に亡くなった人物を選び、その人に関する書物を注文している。2020年5月分は25冊が揃ったので、毎日ほぼ一冊づつ読み、それを材料に人物論を組み立てていく。いずれは読まなければならない本を積んであるので、少しでも暇があったら、前もって少しでも読んしるしをつけておく。トイレには数冊、常に用意しておく。身近に読むべき本を常に用意しておかないとすぐに枯渇してしまうからだ。本を多量に読むためには、積ん読の習慣が大事なことを実感している。

人によっては、本がないことも多々ある。あまり有名ではない経営者などは、自伝も伝記もないことも多い。資料がないのだ。私はとくに「創業者」を重視している。その人をどう描いたらよいのか。企業のホームページから、創業者についての記述があることが多い。また事業展開の年表も大事な資料だ。そして亡くなったの、現在時点の事業分野、規模、人員、決算報告などを参考にしている。時には市販本ではないが、「春雷のごとく 林原一郎風雲録」(秋吉茂)というような周年記念行事でつくられた伝記も手にする。

本は数冊読み比べることもあるが、基本は一冊だ。だから見方が偏っているだろうし、人物の全体像をつかむことはできないという限界はある。それは当然のことだ。書いたその時点で、私の理解の範囲で、人物に取り組むから、専門家からみたら、浅いといいわれるのは仕方がない。

本はおおかたは、その人物を好意的に描いている。しかし、厳しい批判で一書が成っている場合もある。大東亜戦争で学生を戦地に赴かせうことに大きな影響があった田辺元という哲学者について、佐藤優が鉄槌を下した本を読んだ。そういう制約を意識して書くことになるが、やはり引きずられてしまった。

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