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「名言との対話」 7月19日。吉良竜夫「どのような研究もその拠り所とする基礎科学のフィルターにかかる」

「名言との対話」

吉良 竜夫(きら たつお、1919年12月17日 - 2011年7月19日)は、日本の生態学者。理学博士。大阪市立大学名誉教授。

京都帝国大学在学中に今西錦司、梅棹忠夫らと大興安嶺、ポナペ島調査隊に参加する。大阪市立大学在任中に日本各地、中国、東南アジアの調査を行い植物地理学の研究に取り組んだ。温帯における植生分布を説明する指標として「温量指数」という考え方を提案した。植生の変化と気温の相関関係を表す指標である。

日本および世界における森林帯の気候区分体系の解明と確立を行うなど、いち早く生態学的な事象を地球規模で捉えるという広い視点を持ち、日本の生態学のその後の発展の礎を築いた。1982年 - 滋賀県琵琶湖研究所の初代所長に就任(1994年まで)。日本生態学会会長。初代日本熱帯生態学会会長。南方熊楠賞を受賞。吉良のコスモス国際賞受賞を記念して日本熱帯生態学会は1998年に「吉良賞」を創設した。

大阪市立大学で同僚であり、講義が死ぬほど嫌いであり、日本をよく留守にしていた梅棹忠夫の講義の代行をつとめていたそうだ。梅棹は兄のように慕っていた。

1976年発刊の『生態学入門』(梅棹忠夫・吉良竜夫編)では、 梅棹忠夫が「まえがきを書いている。生態学の体系化を目指した本で、卒業論文として人類学、比較文明論に踏み込んでいったとある。

「生態学」について学んでみよう。 世界には3つの秩序がある。物理的秩序(物理科学)・生物的秩序(生物科学)・社会文化的秩序(社会・文化科学)である。物理科学と生物科学の間のフロンティアは生化学・生物物理学・分子生物学であり、生物科学と社会文化科学のフロンティアは生態学・生物社会学・動物心理学などである。

生態学のポイント。温度の高低と乾湿の度合いで植物生態系が決まる。草原ーマツ林ーカシ林と大型の群落に置き換わっていくというサクセッション(遷移)、最後は安定した群落に達するクライマックス(極相)になる。

「どのような研究もその拠り所とする基礎科学のフィルターにかかる」という吉良の言葉が残っている。梅棹忠夫の「文明の生態史観」は今西錦司が主宰する共同研究会で、川喜田二郎が発想し、吉良竜夫が綿密に計算し地図に描いた成果を会得した結果の成果だったのである。

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