「名言との対話」6月23日。程一彦「料理は攻守二面がないとダメ」
程 一彦(てい かずひこ、本名:根本 一彦(ねもと かずひこ)、1937年12月14日 - 2019年6月23日)は、中華料理人・研究家(薬膳・台湾料理・香港料理系)。享年81。
父は日本人、母は台湾人。追手門学院中学、灘高をへて、関西学院大学卒業。台湾料理「龍潭」(リュータン)の二代目オーナーとなる。
程一彦には多彩な顔がある。
「薬膳」。「中医学」を基本に不調のもとになる身体バランスの崩れをニュートラルに戻すための「食薬同源」に基づく飲食療法であり、食材が持つ本来の医療効果を活かした料理のこと。程一彦は薬膳の第一人者だった。
「食育」の重要性を語る広報マン。親が子に伝える食文化の「躾」という考えだった。
NHK「今日の料理」やテレビの人気番組『料理の鉄人』で、「中華の鉄人」の陳建一に勝利し、「鉄人を破った鉄人」として有名になった。
「社会活動」にも熱心だった。阪神・淡路大震災や東日本大震災では、被災地での炊き出しを行っている。日本レスキュー協会の理事もつとめている。また、私生活では趣味として「ジャズシンガー」としても楽しんでいた。
以下、程一彦の言葉を拾った。
「調理は科学!」。身体の仕組み、栄養分析の解説、そして科学用語などを使った説明は、明快で講演や実習指導は人気があった。
「愉しそうな幸せそうな顔して作りましょう。そしたらおいしいもんできるから」。程一彦はユーモアあふれる笑顔で指導する人だった。
「出来合いのものでも、何らかの手を加えてあげてください。健康面でも、精神面でも重要なことです」。
2017年にフランスの専門書で世界のトップシェフ100人に選ばれる。名人が多い中華料理の世界では唯一の選出だったことからも、その力量がわかる。
72歳で65年間続けた「リュータン」を閉じている。「意味深いこれからは歩を固め、講演、授業、放送、執筆、有田焼、ジャズライフなどを、、」という挨拶を記した張り紙があった。再晩年を「意味深いこれから」と意識していたのだ。出処進退が見事だ。
程一彦は「料理は攻守二面がないとダメ」と語っている。「守」は専門の中華料理、「攻」は日本料理、フランス料理であろう。料理人としての専門分野に閉じこもることはなかった。また薬膳、食育についての発言や、マスコミを通じた広報活動、社会活動にも熱心な人だった、そしてジャズシンガーでもあった。料理だけでなく、生き方においても「攻守」そろった人生の達人だったのだ。
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