「名言との対話」5月13日。瀬戸雄三「月給取りになったらアカン」
瀬戸 雄三 (せと ゆうぞう、1930年2月25日 - 2013年5月13日) は日本の実業家。
絶頂期に入社し30年続く転落で「夕日ビール」と揶揄されたアサヒビールの社長としてスーパードライを無敵の商品に育て上げた人である。1992年に社長になって「キレとコク」のスーパードライに「鮮度」を加える。社内の軋轢を乗り越えて製造後20日以内の出荷を10日を宣言し、その後も手を緩めることなく5日にするという目標を達成している。製造から物流にまで徹底的に改革したのだ。97年にはスーパードライはついにナンバーワンになった。私もこのうまいスーパードライのファンになった。現在では製造後、3日以内となっているそうだ
日経新聞「私の履歴書」が元となった自伝『月給取りになったらアカン』(日経)を読んで、たたき上げの営業マンのファイトあふれる、足が地に着いたリーダー論に共感した。
・よい人材をいかにやる気にさせるかがリーダーの役目である。
・リーダーは演出家である。
・社長業は駅伝と同じだ。必死で走り、順位を上げて、バトンを渡す。
・リーダーは、目標を達成するために組織の先頭に立って一番つらい仕事をする。
・リーダーは情報の坩堝(るつぼ)でないといけない。
・経営者は、明快な方針をわかりやすい言葉で組織に示し、組織をダイナミックに動かしていくことが重要だ。
波瀾万丈での企業人生を送り、「変化と挑戦」を続けた瀬戸雄三のリーダー論の中で、私は不満や理由を取り除き現場の負担を解消するという考えに共鳴する。公式な報告だけでなく、現場の本音の「生」の情報に接して、情報の坩堝となって問題のありかをとらえるべきだ。スーパードライと同様に問題の「鮮度」に敏感に反応し、明快な解決策を講じ、すぐさま実行していく。そのサイクルをまわす役目が目指すべきリーダー像であろう。
「月給取り」は、サラリーマン、奉公人、社員などともよばれるが、どういう心構えで仕事をすべきか。私が共鳴した、大成した人たちの言葉を聴こう。
小林一三「サラリーマンとして成功したければ、まずサラリーマン根性を捨てることだ」「下足番を命じられたら、日本一の下足番になってみろ。そうしたら、誰も君を下足番にしてはおかぬ」「金がないから何もできないという人間は、金があっても何もできない人間である」
上原正吉「奉公人根性を去れ」は、本人の心構えを窺える言葉だ。若い頃から、奉公人意識ではなく経営者として当事者意識でことにあたったのであろう。
山口瞳「(新入社員)諸君、一所懸命はたらきなさい。誠心誠意ではたらき有能な社員になってください。有能な社員とは、役に立つ社員のことです。役に立つ社員とは、何か自分のものを持っている社員のことです。誠心誠意はたらきなさい。ミミッチイ考えを起しなさんな。給料分だけはたらけばいいだろう、なんて薄ぎたない根性をお持ちになったらオシマイだよ」
意識が、心構えが、志が、人を育てることを痛感する。