6月28日。市井三郎 「苦痛の減少のためにみずから創造的苦痛を負う覚悟の人間の出現と存在が不可欠である」

市井 三郎(いちい さぶろう、1922年(大正11年)6月18日 - 1989年(平成元年)6月28日)は、日本の哲学者。

昭和時代後期の哲学者。大正11年6月18日生まれ。科学哲学を研究。昭和21年「思想の科学」にくわわり、鶴見俊輔らと中心メンバーとなる。26年ロンドン大学に留学、ポッパーに師事。36年成蹊大教授。近代を独自の歴史哲学から分析、時代の転換点での「キー-パーソン」の重要性を説いた。平成元年6月28日死去。67歳。大阪出身。阪大卒。著作に「哲学的分析」「歴史の進歩とはなにか」など。

「ダーウィンの進化論は進化と進歩を混同している。マルクスの科学的な弁証法的唯物論は現実に裏切られた。パラドックスを超える視点が必要--自由を突き詰めれば平等ではなくなる。多数決は少数の独裁を生む。寛容は非寛容者を生む。主権者が委任すれば奴隷になる。正義を突き詰めれば戦争が起こる」

「人類の歴史の『進歩』をはかる価値基準は何か。それは『幸福』な状態への移行だ」

「人種・民族・階層。奴隷制。素性・毛並。こういった不条理は歴史的に少しづつ減ってきた。この理念の実現のためには、苦痛の減少のためにみずから創造的苦痛を負う覚悟の人間の出現と存在が不可欠である」

「ただ今現在、不条理な苦痛をより多く負うているのはどちらの側かという視点が必要となる」

「この理念は対立を内蔵していないから、普遍的な理念となりうる」

創造的苦痛を引き受ける覚悟とは、志のことであろう。本人の責任でないことで差別を受けるなどの社会にある不条理を少しづつ少なくしていく、それが社会の進歩であり、幸福な状態へ近づくことだ。そのためには、人の苦痛を減らすために創造的苦痛を負う覚悟の人間が要る。志のある人とはそういう人である。

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