「名言との対話」2月18日。陳舜臣「ぶつかり合うと困難が生まれるが そこから取り入れるものが出来てくる しばらくすると素晴らしいものが 出来てくるという希望がある」

陳 舜臣(ちん しゅんしん、1924年2月18日 - 2015年1月21日)は、推理小説、歴史小説作家、歴史著述家。

1941年大阪外国語学校(現大阪大学外国語学部)印度語学科に入学、印度語(ヒンディー語)とペルシア語を専攻した。附設の西南亜細亜語研究所の助手となりインド語辞典の編纂作業などに従事する。終戦にともない日本国籍を喪失することになって将来の見込みがないと退職した。家業の貿易業に従事するが、1961年に37歳で神戸を舞台にした長編推理小説「枯草の根」で江戸川乱歩賞を受賞し、中国を舞台にした中国歴史小説で知られる作家となった。1967年、42歳で書いた「阿片戦争」、「秘本三国志」「小説十八史略」など膨大な著作群の中で五千年にわたる中国興亡の歴史を独自の視点で描き出して独特の領域を生み出していく。神戸を舞台にした推理小説「枯草の根」で江戸川乱歩賞を受賞。

司馬遼太郎とは大阪外語時代からの友人で、司馬の『街道をゆく 台湾紀行』はその友情で成立したものであることが、読むとわかる。陳舜臣の紹介で当時の李登輝総統と司馬の話が弾んだ。

本籍は台湾台北だったが、1973年に中華人民共和国の国籍を取得し、その後、1989年の天安門事件への批判を機に、1990年に日本国籍を取得している。陳舜臣アジア文藝館が2014年に神戸市中央区に開館。2015年、90歳で没。

陳舜臣『中国名言集 弥縫録』(中公文庫)を読んだ。 「びほうろく」と読む。「弥縫」から「有終の美」まで、104の名言が豊富な知識の下敷きのもとに解説されている。1項目は1600字で原稿用紙4枚ほど、それが一定のリズムで続いていく。この中の41項目を読んでみた。

「酒は百薬の長」「洛陽の紙価を高める」「賞は日をこえず」「四面楚歌」「柳眉を逆立つ」「君子豹変」「左遷」「破天荒」「読書亡羊」「禅譲」「杞憂」「宋襄の仁」「矛盾」「推敲」「圧巻」「典型」「杜撰」「泰斗」「背水の陣」「画竜点睛」「虎視眈々」「一衣帯水」など、目からうろこの名文を堪能した。

NHKアーカイブスで陳舜臣の発言を聴いてみた。「革命家の「大同」の思想。チンギスハンの宰相・耶律楚材。民族国家、、、」。この映像では、背表紙ではなく、膨大な著作群を墓石のように並べているのが印象に残った。

中国の近代は失敗の連続だったと語る陳舜臣。失敗だったからこそ学ぶべき点が多いという。そろそろ、そういう歴史からは卒業したいものだという。「ぶつかり合うと困難が生まれるが そこから取り入れるものが出来てくる しばらくすると素晴らしいものが 出来てくるという希望がある」。これは「正・反・合」の弁証法だ。

20世紀の民族国家の成立で民族や宗教による対立はさらに深まっている。力と力の対立では、勝負がついたようにみえるが、次の時代には逆転する。そういう争いを繰り返していいのか。歴史の教訓を学び、共存をめざしたいものだという願いを陳舜臣は歴史ロマンに込めて描き続けたのだろう。

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