見出し画像

「名言との対話」10月20日。入江昭「いつから「現代」になったのか? それは「近代」と何が違うか? 」

入江 昭(いりえ あきら、1934年10月20日 - )は、日本出身のアメリカ合衆国の国際政治学者。

東京都生まれ。成蹊高校卒業後、1953年 財団法人グルー基金奨学生として渡米。ハヴァフォード・カレッジ卒業、ハーバード大学大学院歴史学部を修了しPh.D.取得。専攻はアメリカ外交史。

1961年のハーバード大学講師に就任以来、カリフォルニア大学サンタクルーズ校、ロチェスター大学、シカゴ大学歴史学部を経て、1971年シカゴ大学教授。1989年ハーバード大学歴史学部教授に転じ、歴史学部学部長をつとめた。また日本でも早稲田大学、立命館大学、関西大学の客員教授を歴任した。

日本でも1960年代より、『中央公論』誌上などでも活躍した。『日本の外交』(1966年)などに見られるように、思想・文化の影響力を重視するアプローチが特色であり、多国間の視点とその相互作用を組み込む「国際史(International History)」研究をしている。長く日本の針路にも大きな影響を与え続けた論客である。

1970年、論文「平和的発展主義と日本」で吉野作造賞を受賞。1987年、日本人初のアメリカ歴史学会会長となる。2013年には国際交流基金賞を受賞した。

『日本の外交ーー明治維新から現代まで 』(中公新書。1966年)では、日本の外交思潮のパターンは、日露戦争時にみられれたように「政府の現実主義と民間の理想主義」の対立であるとし、そこから外交への指針を示した。

五百籏頭真の「私の履歴書」では、「当時、日米関係史研究で学会をリードしていたのは、国際政治学会理事長になる細谷千博一橋大教授や、太平洋を行き来しつつシャープに議論をする入江昭シカゴ大学教授らであった」との記述を私も日経紙上で読んでいる。

1988年のアメリカ歴史学会(AHA)会長時代の年次総会でも講演であり、「歴史研究の国際化」の必要を提唱している。その一部を紹介する。

「国の歴史を理解するには、外からだけでなく内からも調べる必要があること、また、歪んだ過去の見方を減らすためには、様々な視点から学ぶことを厭わなければ、誰であっても構わないということを教えてくれました」。

「占領が終わって間もない頃にアメリカに来た私も、他の歴史を学ぶ学生と同じように扱われました。大学や大学院の教授たちは、私が部外者であることを歴史研究のハンディキャップとは考えなかったことに感謝しています」。

「外部からの介入は、より偏狭な過去の見方を形成するためには、国際的な協力が必要であることを示しており、歴史の国際化の健全な発展の一つであると言えるだろう」。

「記憶された過去の総体は、私たち全員が相続人である文明の遺産を形成しているのです。この人類共通の信仰を認識し、再確認するのに、歴史学界ほど適した職業はないと思われます」。

2014年の近著『歴史家が見る現代世界』(講談社現代新書)では、「いつから「現代」になったのか? それは「近代」と何が違うか? 」という問いを発し、地球規模で進行する大きなうねりを見逃してはならないと語っている。

私はある講座で日本の近現代を語るというテーマを掲げた時、近代はいつからで、現代はいつからか、という疑問を持って調べたことがある。そして、定説が無かったことに驚いた。現代はいつから始まったのか。それは「現在」がいつかによって変わってくるのだ。その現在が、戦後間もない時期であるか、バブルの時期か、平成か、令和か、によって現代は伸びていくのである。今の私は明治維新から「近代」が始まり、戦後から「現代」が始まると理解している。

21世紀は国際という二国間関係を超えて、今では地球という視点でグローバルに歴史を考えなければならない時代になった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?