7月22日。 杉浦日向子「お江戸でござる」
杉浦 日向子(すぎうら ひなこ、本名:鈴木 順子(すずき じゅんこ)、1958年〈昭和33年〉11月30日 - 2005年〈平成17年〉7月22日)は、日本の漫画家、江戸風俗研究家、エッセイスト。
東京都生まれ。稲垣史生に弟子入りし時代考証を学ぶ。1980年、「ガロ」で漫画家としてデビューする。1984年、『合葬』で日本漫画家協会優秀賞を受賞。1988年、『風流江戸雀』で文藝春秋漫画賞受賞。漫画作品としては、『杉浦日向子全集』(筑摩書房、全8巻『二つ枕』『合葬』『百日紅(上・下)』『東のエデン』『風流江戸雀』『百物語(上・下)』収録)などがある。
1993年に漫画家引退を宣言。ライフワークである江戸風俗研究家として活動を開始する。NHK総合テレビ『コメディー お江戸でござる』では江戸の歴史、風習についての解説コーナーを足かけ10年務めた。晩年は文筆業に専念し、『江戸へようこそ』(筑摩書房)『江戸アルキ帖』(新潮社)『ぶらり江戸学』(マドラ出版)など、多くの作品を遺した。2005年7月22日、下咽頭がんのため46歳で逝去。
杉浦日向子『憩う言葉』『粋に暮らす言葉』には、江戸っ子の生き方に惚れた言葉が並んでいる。「江戸では、頑張るは我を張る、無理を通すという否定的な意味合いで、粋じゃなかった。持って生まれた資質を見極め、浮き沈みしながらも、日々を積み重ねていくことが人生だと思っていたようです」
また、「人間一生、物見遊山」が江戸の人生観だという。杉浦日向子のいう江戸の価値観は、庶民である江戸っ子のものだ。一生懸命は野暮で、努力をみせないのが粋という。現代人は野暮になったから、少し息を吐いて江戸っ子のように遊びながら粋な生き方をしようというのが杉浦の提案である。子ども時代は「巨人・大鵬・玉子焼き」ではなく、「可楽・柏戸・味噌おにぎり」だった、というからずっと粋の精神で生きたのだろう。山形県鶴岡の横綱柏戸記念館を訪問した時、「阪神・柏戸・目玉焼き」という言葉をみつけて驚いたことがある。鶴岡の人々も粋だったのだろうか。杉浦は私生活では、博物学者の荒俣宏と結婚し、後に離婚している。
『コメディー お江戸でござる』では江戸の歴史、風習についての解説コーナーを担当していて、私も10年近くその博識な名解説を楽しみにしていた。漫画家はみな勉強家だ。江戸時代を中心に漫画を描いた杉浦日向子の江戸風俗に関する勉強量は半端ではないはずだ。 病気によって漫画家を引退したとき、「隠居」と説明しているのは、いかにも江戸っ子に心酔した杉浦日向子らしい。