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「名言との対話」9月4日。阿部牧郎「リスクの限界にとどまっていたんじゃ、自分の世界を広げられない」

阿部 牧郎(あべ まきお、1933年9月4日 - 2019年5月11日)は、日本の小説家。

京都大学文学部フランス文学科卒。サラリーマン生活の傍ら作家活動に入り、1968年に『蛸と精鋭』が直木賞候補になる。以後69~71年にかけて7回(61, 62, 64, 65, 67, 71回)候補になる。1987年にようやく『それぞれの終楽章』で直木賞を受賞した。この本は自身の戦後史や男の友情を描いた作品である。受賞作までの悪戦苦闘の足跡を綴った自伝的小説に『大阪迷走記』(新潮社)がある。

ブクログユーザーが登録している作品数は全448となっている。途方もない量だ。官能小説、ポルノ小説、推理小説、野球小説、戦記小説、評伝など、守備範囲は実に広い。評伝や戦記小説で取り上げた人物は、松下幸之助、井植歳男、五代友厚、山本五十六、東条英機、米内光正、阿南惟機、石原莞爾、重光葵、東郷茂徳らがいる。

大阪放送で「阿部牧郎とその一味」、京都放送で「話のターミナル」でのパーソナリティをつとめるなど多彩な活動家だ。

競馬ファンでもあり、読売ジャイアンツファンでもあった。今回読んだのは1979年発刊の『狼たちが笑う日』(徳間文庫)の単行本の文庫版だ。

セ・リーグの7番目の新球団・東京レンジャーズの創立の物語だ。既成の12球団から選手の供出を受けて、ズブの素人である38歳のサラリーマン課長がぶちこわし野球で、優勝する。長島、広岡、王、張本、平松、などの一流選手が実名で登場し、この球団の選手は名前をみるとそれとわかる選手で、楽しめる。企業のマネジメントの説明、ラブロマンスもある。「解説」では、超スーパーウルトラデラックス級の大傑作、和製野球小説のNO1、という評価だ。実際に読んでみて、そのことを納得した。小説の名手であることは間違いないと思った。

阿部牧郎の膨大な作品の中から、いい言葉を拾ってみた。

・人生は、玄(くろ)い冬にはじまり、青い春と朱(あか)い夏を経て、白い秋に至る。暗い冬で終わるのではない。

・驚くべき繁栄の法則は、何回も心を込めてこう繰り返すことです。『私は自分の望んだことを全てかなえてもらえる』。ここから奇跡が始まります。

・『ただの人』『下手』『達者』『上手』を経て、始めて『名人』と称される。

・いつも酔っていなければならぬ。、、、、酒・詩情・美徳、酔う対象はあなた次第だが、果たしてあなたは酔えるだろうか。

・どんな仕事に取り組むときでも忘れてはいけないことがあります。それは継続するということです。継続すれば、いつか必ず報われる時がやってきます。

・決定をあせってはならない。ひと晩眠ればよい知恵が出るものだ。(プーシキン)

・友達。ただ好きだから一緒にいる関係よ。

・『愚直に、真面目に、地道に、誠実に』働け。

・本物の自信はぬかるみに足をとられとられしてつけていくものである。

・あなたの目的は、自分が誰であるかを発見することです。

・成功の秘訣を問うなかれ。なすべき一々(いちいち)の些事に全力を尽くせ。(サミュエル・ジョンソン)

・愚かな人にありては、聡明なる人が愚者に対して嫌悪を感ずるよりも百倍も多くの、聡明な人への反感が見出さるることを知れ。(サーディー)

・女性は三流の男性になるより、一流の女性になるべきだ。

冒頭に紹介したのは、「リスクの限界にとどまっていたんじゃ、自分の世界を広げられない」だ。その前には「リスクを超えることによって、自分の限界を広げていくことができる」が添えてある。この人の仕事の量の多さと質の高さ、そして競馬や野球、ラジオ出演などの幅広い活動は、こういった信条によって支えられているのだろう。限界を突破することによって自分の世界を広げよう。阿部牧郎からはそういうメッセージを受けとった。


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