「名言との対話」5月29日。野口雨情「童謡は童心性を基調として、真、善、美の上に立つてゐる芸術であります」

野口雨情(のぐち うじょう、1882年明治15年)5月29日 - 1945年昭和20年)1月27日)は、詩人童謡民謡作詞家。享年62。

茨城県茨木市生まれ。その後の人生を眺めると、東京専門学校の中退から始まり、失敗、不発、転々、悶々、離婚という苦悩の言葉が垣間見える。

1905年の民謡詩集「枯草」から始まる詩人としての活動は活発で、童謡、創作民謡などにも多くの名作を残した。北原白秋西條八十とともに、童謡界の三大詩人と謳われるまでになった。

代表作で私もよく歌ったのは、「十五夜お月さん」「七つの子」「赤い靴」「青い目の人形」「シャボン玉」「こがね虫」「あの町この町」「雨降りお月さん」「証城寺の狸囃子」「波浮の港」「船頭小唄」などがある。日本なら誰でも知っている歌がこれほどあるということに感嘆する。

「シャボン玉」は、野口雨情が生後まもなく死んでしまった長女に捧げた鎮魂歌だったともいわれている。 我が子の死を悲しみ、はかないシャボン玉にそれを託し、最後に「風風吹くなシャボン玉とばそ」と我が子の魂が天国で幸せにという気持ちを込めた詩に、童謡作曲家の中山晋平が、優しい曲をつけている。

私は2009年に、八王子恩方にある「夕やけ小やけ ふれあいの里」の中村雨紅展示ホールを訪ねた。中村雨紅は、童謡「夕焼け小焼け」の作詞者である。19歳で府立青山師範学校を卒業、21歳で童話を書き始める。24歳で野口雨情宅を訪問し、以後中村雨紅をペンネームとするなど、後進にも大きな影響を与えていることを知った。

今回『野口雨情 名作全集』(日本文学研究会)を手にした。第1章「青い目の人形」から始まり、石川啄木小川芋銭との交流の随筆もあり、第24章の「未刊童謡」までが集録されている。この最初の「青い目の人形」に、野口雨情の童謡観が記されている。

「童謡は童心性を基調として、真、善、美の上に立つてゐる芸術であります」とあり、続いて、「童謡の本質は知識の芸術ではありません、童謡が直に児童と握手の出来るのも知識の芸術でないからであります。童謡が児童の生活に一致し、真、善、美の上に立つて情操陶冶の教育と一致するのも超知識的であるからであります」との力強い言葉がある。

童謡、童話、絵本などは、子どもや児童の情操、正義感、暖かい心を育む。こういった仕事に心血を注ぐ人たちは、聖なる人たちであると思う。わけても童謡は音楽の力によって、子どもたちの心に深く宿る。そういう人たちの代表格が野口雨情である。


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