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「名言との対話」12月27日。ベーナズィール・ブットー「パキスタンは、核心的技術を持っているが、平和目的に限って使ってきた。今後、核兵器製造や核実験、兵器技術輸出などのために使わねばならない日が、決して来ないことを願っている」

ベーナズィール・ブットー(Benazir Bhutto、シンド語:بینظیر ڀھٽو、ウルドゥー語: بینظیر بھٹو(1953年6月21日 - 2007年12月27日))は、パキスタンの政治家。

祖父、父と有力政治家を産んだパキスタンの「ブット王朝」と呼ばれる名家出身のこの女性は1969年4月、米国ハーバード大学のラドクリフ・カレッジおよび英国オックスフォード大学レディー・マーガレット・ホール校で学び、1973年秋にオクスフォードに進学。PPE(政治学・哲学・経済学)で修士号を得た。

帰国後、父であるズルフィカール・アリー・ブットー首相が設立したパキスタン人民党(PPP)の総裁(党首)となり、イスラム諸国家における初の女性首相になった。当時のイスラム諸国最年少の35歳のリーダーとなった。この年にビープル誌で「世界でもっとも美しい50人」にも選出されている。1993年には2度目の首相に選出されている。2007年12月27日に、政界復帰を目指して、国会議員選挙運動中に銃撃と自爆テロで暗殺された。10数年前のこのニュースは世界に衝撃を与えた。私もその一人だった。

英国からの分離独立したヒンズー教徒中心のインドとイスラム教徒中心のパキスタンは宿敵同士となって、紛争は恒常的に起こっている。パキスタンの核の論理をブットーは次のように説明している。

「パキスタンは、核心的技術を持っているが、平和目的に限って使ってきた。今後、核兵器製造や核実験、兵器技術輸出などのために使わねばならない日が、決して来ないことを願っている」「わが国を核拡散の道へ追いやる国がインドであることを認識せねばならない。インドは、南アジアを救うため、自制すべきだ」

しかし、インドは核を持った。パキスタンも後を追うしかない。それが唯一の自衛手段であると、後にパキスタンも核実験を強行し、事実上の核保有国となった。

現在パキスタンは隣国アフガニスタンからの難民流入によって人口が急増しており、2017年には2億人を超えている。2050年には中国、インド、アメリカに次ぐ人口大国になると予想されている。

2013年、女性が教育を受けることに反対するタリバンから頭部と首に銃撃を受け負傷し奇跡的に命をとりとめたパキスタンの15歳のマララ・ユスフザイは世界の注目を浴びた。マララは国際連合本部で演説し、銃弾では自身の行動は止められないとして教育の重要性を訴えた。2014年にノーベル平和賞を受賞したマララは、イスラム世界における初の女性首相であるベーナズィールに刺激を受けたと語っている。マララは米タイム誌が発表した「2014年最も影響力のある25人のティーン」の一人に選ばれている。

女性差別の厳しいイスラム教を奉ずる国で、首相をつとめた女性・ブットーの動向は内外で注目されていた。そのブットーに刺激を受けた40年以上後に生まれた女性が次の時代を担っていく。一人の人物の出現は、後の世界に大きな影響を与える、そのことを改めて思った。

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