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9月27日。 森村桂「開拓精神にもえ、実行力、独創力に冨み、やる気充分。但し、なまけもの」

「名言との対話」9月27日。森村 桂(もりむら かつら、1940年1月3日 - 2004年9月27日、本姓:三宅)は、日本の作家。

1965年、当時の女子大生言葉(森村は学習院大)を駆使したエッセイ『違っているかしら』で25歳でデビューする。次いでニューカレドニア旅行の体験を描いた旅行記『天国にいちばん近い島』を発表し、200万部を超える大ベストセラーとなった。1960年代末には、書店には川端康成と共に、森村桂コーナーが設けられるほどの流行作家となった。1970年代には講談社から「森村桂文庫」約30巻が刊行されている。

私生活では手作りのケーキとジャムの店「アリスの丘」を開く。趣味の絵画も「アリスの丘絵画展」を全国で開くほどになる。 探検家の谷口正彦と結婚するも後に離婚。再婚の後も精神を病むことが多く、自殺。

今回読んだのは、たまたまデビュー作の『違っているかしら』だ。明るくお人よしでオッチョコチョイで不器用な女の子の自伝的な就職活動奮戦記だ。失敗を重ねながら落ち込んだり、元気が出たりしながら、世の中に出ていこうとする女性の健気な奮戦を、軽やかな文体でつづっている。自分にも思いあたるふしがあると若い女性が共鳴するユーモア満載の内容だ。

やっと入れてもらった婦人文化社では、数々の失敗はするが、将来への期待を上司たちは感じてくれた。しかし、人とは「目盛りが違う」ということで、辞めてしまう。そして鉱石運搬船に便乗して南太平洋のニューカレドニア島にわたる。この本は「開拓精神にもえ、実行力、独創力に冨み、やる気充分。但し、なまけもの」という宣言で終わっている。目盛りが違う。それは長所でもあるのだが、会社の目盛りに長い時間をかけてあわせていかなければならない。若い頃の私にもそういうところがあったが、働いているうちに何とか大きくははみださないようになっていったから、森村桂のドタバタ劇はよくわかる気がする。

軽井沢に開いたティールームは「アリスの丘」というネーミングだった。最近みた「不思議の国のアリス」展の、あのアリスではないだろうか。幼い少女が白うさぎの後を追いかけて不思議の国に迷い込み、しゃべる動物や動くトランプなどさまざまなキャラクターたちと出会いながら冒険するさまを描いた、世界中で読まれた物語だ。森村桂は「アリス」だと自認していたのではないだろうか。その不思議な国の旅行記が、森村桂の作品群だろう。考えてみれば、世の中は不思議の国そのものだ。地方でも組織でも文化が違う。海外に出れば文化の違う民族がゴマンといる。文化は価値観だ。豊かな感受性でその奇妙さの中を旅する森村桂を女性たちが応援したのだ。

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