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「名言との対話」(平成命日編)9月5日。 堀田善衛「目的地に達しうるかどうかは頭のよしあしなどにかかわらない。信じて持続できるものを見つけたか否かのみにかかわる」

堀田 善衛(ほった よしえ、1918年(大正7年)7月7日 - 1998年(平成10年)9月5日)は、日本の小説家、評論家。

富山県出身。慶應義塾大学政治科予科から文学部仏文科を卒業。1945年3月に国際文化振興会が中国に置いていた上海資料室に赴任。中国国民党中央宣伝部対日文化工作委員会に留用される。1951年、『中央公論』に話題作「広場の孤独」を発表し芥川賞受賞。1956年、アジア作家会議に出席のためにインドを訪問し、岩波新書の『インドで考えたこと』を上梓。1959年にアジア・アフリカ作家会議日本評議会の事務局長に就任。1974年に結成された日本アジア・アフリカ作家会議でも初代の事務局長を務めた。1977年に評伝『ゴヤ』完結後、スペインに居を構え、以後はスペインと日本とを往復する。

この作家の本では『インドで考えたこと』を読んだ記憶がある。内容は忘れてしまったが、学生時代には評判の本だった。アジア・アフリカ作家会議の活動に長くかかわったこともあり、国際的に知られた作家だった。

今回、1995年に刊行された『美しきもの見し人は』を読んでみた。ギリシャ、キリスト教、科学精神に肉薄できない日本人として、ヨーロッパの美術についての感想を書くことに挑戦した本だ。事前にあまり勉強せずに、アフリカなどへの仕事の休憩地としてヨーロッパで好きな美術を10数年という長い時間をかけて見て歩いたことをテーマとしたエッセイである。「ものをみるということはやはり容易なことではない」と悟った堀田は、「美はやはり人をためすのであり、人にその本音をはかせるところにその徳があるものであろう」と語っている。

ガウディ「これを完成させるのは、聖ヨセフでしょう」という粋なセリフも紹介されている。最近のニュースでは、完成まで300年以上かかるといわれていたガウディのサグラダ・ファミリアは2026年に完成する。それはガウディの没後100年にあたるというから、世界的なブームになることだろう。

肖像画に関しては、「画家であるということは、人間が描ける、ということにほかならなかった」と述べている。トレド大聖堂にある歴代大僧正の肖像画は、個々人を越えた恐ろしい歴史を感じさせるそうである。足のふるえるほどの経験だった。1521年から1957年までの400年以上の大僧正の肖像が並ぶ姿を眺めてみたいものだ。私の「名言との対話」も、堀田善衛のアドバイスを信じて、人間が描けているかと問いかけながら持続していくことにしよう。目的地はまだみえない。

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