翻作「不思議な着物」

ある有名な童話をもとに、「不思議な着物」というお話を作ってみました。そのお話は、次のように始まります。

あるお城に、着物が好きな殿様がいました。ある日、一人の商人がやってきて、「私は不思議な着物」を持っていると言いました。殿様が「どんな着物か?」と聞くと、商人は「軽くて柔らかくて、着ているかどうかわからないほど着心地が良い着物でございます。そのうえ、ずるい人には見えないという不思議な着物でございます。だから、とても高価でございます。」答えました。殿様は、国中からお金を集めて、その着物を買いました。不思議な着物のうわさは、国中に広がりました。
(中略)
人々は驚きました。胸を張って堂々と歩く殿様がすっぱだかだったからです。けれど、人々は、自分がずるいと思われることを恐れて、「すばらしい!すばらしい!」と叫びました。ひとりの子が「とのさま、はだかだ。」とつぶやきました。そのつぶやきは、人々の間に、さざ波のように広がっていきました。おしまい。

アンデルセンの「はだかのおうさま」を私なりに「翻作(ほんさく)」したらこのようになりました。翻作する際、ネット上で見つけたデンマーク語版の「皇帝の新しい衣装」・ドイツ語版・英語版を自動翻訳アプリにかけたものや、70年以上前の日本の国語教科書に載っているものを参照しました。翻作する過程で見えたことや考えたことや工夫したことが、いろいろありました。原作そのものについての認識も深まりました。
ここに紹介した表現は「翻案」とも呼ばれます。私は、何らかの原作をもとにした表現を「翻作」または「翻作表現」と呼んでいて、「翻案」もその中に含まれます。詳しくは、拙著『国語を楽しく』の第4章「翻作のすすめ」で具体例を示しながら説明しています。
https://amzn.to/3FjLpcw


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?